罰するより、つながり直す力を――ブロンクスの学校が教えてくれた「癒し」の形
『私の骨が知っていること』(ステファニー・フー著/中村慎之介訳、浅井咲子監訳 岩崎学出版)
のなかに、モット・ヘブン・アカデミーという学校を著者が取材したときの話が39章に書かれています。
少し要約してご紹介してみたいと思います。
↓
数年前、アメリカ・ブロンクスにあるチャータースクール「モット・ヘブン・アカデミー」を訪ねた。 この学校の生徒の多くは、里親制度のなかで育った子どもたちだ。 何度も家を転々とし、安心できる場所を見つけられないまま幼少期を過ごしてきた。
ある昼休み、運動場では子どもたちがサッカーや鬼ごっこに夢中だった。 ただ一人、しかめ面をして立ち尽くす少年――ジェレミーを除いて。 彼は突然、木の枝を拾い上げて、遊んでいる子どもたちのグループに投げつけた。
暴力的な行為に見えたその瞬間、校庭監視係の女性は怒鳴ることも、罰することもせず、彼の前にしゃがみこんだ。
「なにか嫌なことがあったの?」
ジェレミーは小さな声で答えた。 「一番仲良しの友達が、今日は他の子と遊んでるんだ……」
彼の中にあったのは怒りではなく、見捨てられたような寂しさと不安だったのだ。 女性はすぐにその友達ニコを呼び、二人の心をつなぎ直した。
「大親友でも、時々は別の子と遊んでもいいよね。嫌いになったわけじゃないよ」
そう言葉をかけると、ジェレミーの顔がやわらいだ。 やがて彼はサッカーの輪に戻り、笑い声をあげて走り回っていた。
モット・ヘブンでは、子どもが荒れた行動をした時、罰する代わりに関係を修復することを大切にしている。 授業中に立ち歩いても罰しない。 代わりに、安心して気持ちを落ち着けられる「くつろぎのスペース」や、心を共有する時間が用意されている。 ほとんどの子どもが週に一度、セラピストと面談する。
「問題行動」は罰すべき「悪」ではなく、 「助けてほしい」「わかってほしい」という心のサイン。 この学校では、大人がそのサインを見逃さない。
ある生徒のウィローは、こう語った。
「この学校には“このグループ・あのグループ”なんてないの。 みんなでひとつ。みんな、心の奥はやさしいのよ」
一般の子どもたちの13%がACEスコア(逆境的小児期体験)4以上なのに対し、 里親制度を経験した子どもでは51%にのぼる。 虐待や転居、喪失を経験した子どもたちが安心を取り戻すには、 「安全なつながり」こそが薬になる。モット・ヘブンの子どもたちは、罰ではなく、理解と関係性によって回復していく。 彼らは「愛される感覚」を少しずつ取り戻し、 自分の居場所を再び見つけていくのだ。
↑
トラウマインフォームドの教育機関が増えていくことで、大人になってからの関係性の困難や、健康被害が減少していきますね。一人一人がトラウマの負荷から解放されたら、もっと生きやすく、もっとその人らしくいられます。一人一人まずは自分からですね!





