・哭檄、墓穴を掘る・・・(Ⅳ) | 日本哭檄節

日本哭檄節

還暦を過ぎた人生の落ち零れ爺々の孤独の逃げ場所は、唯一冊の本の中だけ・・・。
そんな読書遍歴の中での感懐を呟く場所にさせて貰って、此処を心友に今日を生きるか・・・⁈

 寄り道が過ぎて、結果的に『Ⅳ編』まで来てしまったが、けふ(今日)は、しっかり埋め戻そう・・・(汗)

 

 結果、ジジイの

『穴、突っ空(ぽ)がし事件・・・』

で、若干時間を要したが、まあ、見た目には気付かれない程度に土塗られて調えられた『池』をキレイに攫(さら)えると、加勢人たちは、一旦、借り宿に帰り、今度は

『葬送の儀・・・』

の段取りに掛る・・・!

 

 と云っても、それは、借り家に残って居た加勢人さんたちが、既に出来上がった棺桶に死人を『納棺』させて、喪主家の葬式の準備は整って居るから、到着するお坊さんを待っての

『誦経・・・』

に合わせた、参列者の焼香の終わりを待てば善いだけで、葬列に遣われる五色幟や提灯も出来て居るから、後は、葬儀が終わった棺桶を、掘った『池』まで、朝伐って来た青竹に担いで運ぶ役目を負うだけの話なのだが、この棺桶を背負う役は、『池掘り』には参加して居ない

『屈強な若け衆(し)の仕事・・・』

と決まって居る・・・(笑)

 

(画像は、gendai.media より拝借)

 

 それに、これも厳かに運ばなきゃならないモノだから、バランスを取るために

『体格の似たような二人・・・』

に御指名が掛り、ジジイら『池掘り人足』は、焼香が終わって、喪主家の、

『死人との最後のお別れ・・・』

が行われて居る内に、借り家に揃えて有る墓標や飾り枠を持って、そそくさと墓地にとって返し、葬列(=棺桶)のご到着を待てば善いだけ・・・!

 

 さすがに、葬儀の最中は冗談を云うオジサンは居ないが、元を糺せば『他人事の加勢』だから、墓地への往復中の雰囲気に厳かさなど微塵も無く、雑談を交わしながらの道中で、此処でもジジイは、耳をそばだて、昨今のオジサン社会や集落情勢の噂話の収集に余念、怠り無く・・・(笑)

 

(画像は、gendai.mediaより拝借)

 

 墓地で30分も待てば、先頭に五色幟を立てた葬列が到着し、黒い喪服を着た御親族御一同も揃われ、そこで、いよいよ

『棺桶の池沈め・・・』

が始まる訳だが、此処では、担いで来た屈強な衆だけでは沈められないから、池掘り人足衆も加勢して静かに沈めるのだが、この時、この加勢人足さんたちは、

『ジジイが突っ空(ぽ)がした穴の場所・・・』

は判って居るから、そちらに棺桶が当たらないように気を付けてくれて、ジジイの墓穴は、喪主家にはバレずに済んだのだ・・・(笑)

 

 棺桶が無事地底に沈むと、最初に喪主殿が、穴の脇に盛って在る土を一掴み棺桶の蓋の部分に

『バラッ・・・』

と投げげ入れ、それに続いて親族の方々も同じように一掴みずつ土を投げ入れて棺桶に別れを告げる儀式が済んで、さあ、いよいよ埋め戻し・・・!

 

 池掘り加勢人たちが、今度は、四方からスコップや鍬などで遠慮無く盛り残して措いた土を放り込んで、さすがに棺桶の上には乗らないが、脇の隙間を足で突き固めながら棺桶上部を地面より2、30cmほど盛り上げた格好の小山に仕上げ、これに、携えて来た飾り枠を置き、その中心に、坊さん揮毫に依る戒名が記された真新しい墓標が差し込まれて、飾り枠の前の置台に対の花立てや蝋燭、線香立てが置かれて、

『木製の墓・・・』

は無事完成・・・!

 

 毎回感じたことだったが、この真新しい木製墓は、辺りの苔むした石の墓の中で、一際新鮮さを漂わせて、悪い感じはしなかったよな・・・!

 

 と云うのは余談で、後は、それを見守って居た親族の方々が、入れ替わり立ち代わり線香を手向け、合掌をし終わる間、ジジイ等加勢人は、如何にも『お気の毒』を装った神妙な顔付きで、その一連の儀式の終わりを待つのだが、あの静寂は、妙に時間が長く感じた記憶が有るなあ・・・!

 

 で・・・、御親族御一同が、本当かどうかは判らないが、

『背中に寂しさを漂わせ・・・』

ながらお帰りになって暫く間を措いて、加勢人一同も借り家へと引き返すのだが、その頃には、葬列に加わらなかった在宅加勢人さんたちは、もう座敷に上がっての

『慰労会・・・』

が始まって居るし、賄いを引き受けてくれた御婦人方も、もう役目を負えて下座に座ってお喋りに興じて居らっしゃる訳で、そこには、

『死人を葬(おく)った・・・!』

と云う厳かさなど微塵も無い・・・(笑)

 

 そんな賑やかな中に池掘り加勢人一行が到着すると、座敷の一番上座が空けられ、その日の葬儀一式を取り仕切った『主執(しゅど)い』と云う長老さんが、

『ご苦労さあじゃったなあ・・・!』(=ご苦労様でした・・・!)

と云って迎えてくれて、各自に早速茶碗酒が振舞われるのだが、未成年の哭檄少年には、お茶が一杯・・・(笑)

 

 葬式の加勢の日には、サイダー一本、気を遣ってくれる大人は居なかったな・・・(笑)

 

 それに、その頃になると、まだその時代にはゾロゾロ居た近所の幼いガキどもも、自分の親がそこに居るのを識って居るから、家の庭に集まって来て、残りモノの握り飯や煮〆のご相伴に与り、

『これが、葬式かあ・・・?!』

と云うほどの賑やかさに為るのが毎度のことだったし、その昔は、ジジイも、その洟垂れガキどもの一員だったのだ・・・(笑)

 

 だから・・・、ジジイも、幼心に、

『葬式が有る日・・・』

は、何か妙に嬉しかった記憶が有るしな・・・(汗)

 

 で・・・、加勢人の一座の酒がある程度廻って、皆が『快い気分』に為った頃、当の喪主家の主殿が、加勢のお礼にご参上為されると、それまで盛り上がって居た一座が、瞬間に水を打ったように静かに畏まり、そのご挨拶を受けて、各自が、口の中で何やらモソモソと聴き取れないお悔やみを唱え、暫くすると、先ずは御婦人方が、

『夕飯の支度・・・』

を理由に腰を上げられ、序でに、我が旦那さんに、

『あんまい、呑んみゃんなよ・・・!』(=あんまりたくさん呑んだらダメよ・・・!)

と一睨みして、庭で待って居る我が子の手を引いて帰って行かれるが、云われた旦那は、何処吹く風で、暗くなるまで焼酎が行き廻(か)いして、更に快い気分になったオジサンたちの散会と云う流れになって、その一日は終わるのだったが、一言添えて措くと、未成年の哭檄少年は、気が弱いので途中で中座する度胸が無く、いつも最後まで付き合わされて

『耳年増へと育った・・・?!』

のだと、今も信じて疑わない・・・(笑)

 

 フウ・・・、何とか四編で、埋め戻しまで持って来れたかな・・・(汗)

 

 と云う訳で・・・、今回の、

『非無形文化財的土葬描写の編・・・』

を終わらせて頂きます・・・(汗)

 

 長々の駄文に、最後までお付き合い頂いた方も居て下さったようで、誠にありがとうございました・・・(謝&拝)