・人生100年時代・・・(1) | 日本哭檄節

日本哭檄節

還暦を過ぎた人生の落ち零れ爺々の孤独の逃げ場所は、唯一冊の本の中だけ・・・。
そんな読書遍歴の中での感懐を呟く場所にさせて貰って、此処を心友に今日を生きるか・・・⁈

 もう10日ほど前のネタになるが、NHK総合の「NHKスペシャル・・・」が、二日連続で

「人生100年時代を生きる・・・」

と題した

「現代Nippon高齢化社会の裏事情・・・」

を特集していた・・・。

 

 否、なかなか「深い裏事情・・・」を赤裸々に取材した「考えさせられる番組・・・」だったから、観られた方も多かっただろう・・・⁈

 

 その初日(=第一話)は、

「終(つい)の住処はどこに・・・」

と銘打った編集だったが、これを特集したキーワードは

「サ高住・・・」

と云う言葉だった・・・。

 

「サこうじゅう・・・」

と読むが、これだけでは小生には何の事だかさっぱり解らなかったが、それが、

「サービス付き高齢者向け住宅・・・!」

と聞けば、その「意味・・・」は大まかは理解出来る・・・。

 所謂「サービス(=介護)付き・・・」で、高齢者が入居出来る「住宅(=住処・・・)」と云う事だ・・・。

 

 この「サ高住・・・」なる施設・・・。

 お上(=政府=厚生労働省&国土交通省・・・)が、高齢化時代の

「動ける高齢者対策の切り札・・・」

として編み出した「妙案・・・」だったらしいが、これが、今やその「目論見・・・」と大きく違った

「厳しい問題点・・・」

に悩まされ始めていると、番組が「オーバー・・・」に宣ってくれて居た・・・。

 

 で、だが・・・。

 この「サ高住」なる「お切り札制度・・・」は、国が平成23[2011]年に、

「高齢者に安全な居住空間を確保し、介護や医療と連携したサービスを提供すること・・・」

を目的として建設を推進し出した「賃貸住宅・・・」のことらしく、

「比較的元気(=健康)な高齢者に安心して暮らしてもらう・・・!」

と云う趣旨(=目論見)で、税金(=補助金)を注ぎ込んでの「超高齢化時代対策・・・」だったようなのだ・・・。

 

「健康な高齢者・・・」

を迎え入れるべく整備されるのだから、当然、

「要介護度が低い高齢者・・・」

が入居対象者になる訳で、当然「医療費・・・」が掛からない(=または、少なくて済む・・・)高齢者を受け入れ対象にする・・・。

 従って、内部の設備も

「然程高額にはならない・・・」

し、世話(=介護・・・)に関わるSTAFF(=職員)数も、特別養護老人ホームや介護老人ホームなどに比べると、基準は遥かに低くなる・・・。

 従って、施設に入居する高齢者の「負担・・・」も比較的に少額(=と云っても月に平均で14万円は掛るそうだが・・・)で済むとの謳い文句に踊らされて、医療介護に然程の「経験・・・」が無い業界(=資本側・・・)からの「跳び着き参入・・・」が相次ぎ、番組取材段階で、既に全国に「24万戸・・・」の登録戸数が数えられているらしいが、お上は、2020年度までに「60万戸・・・」を整備する計画だそうだから、これからの2年間で「約3倍近く・・・」にまで急増する計算だ・・・。

 

 だが、この「サ高住・・・」が、制度開始から僅か6、7年にして、最早

「想わぬ事態(=想定外・・・)」

に直面し始めていると、番組が煽って居る・・・。

 

 当初、お上が目論んだ入居想定高齢者は、所謂

「自分で動ける高齢者・・・」

だったのだそうだが、その「動ける高齢者・・・」の中には、

「認知症高齢者・・・」

も含まれていると云う・・・。

 そして、この「認知症高齢者たち・・・」が、善かろう(=儲かろう・・・)と想って開設された「サ高住・・・」のSTAFFたちの労働環境を苦しめ、もう片方で、それを運営(=経営・・・)する事業者側の経営をも圧迫し始めていると云うのだ・・・。

 

 何せ、

「動ける認知症高齢者・・・」

ほどに厄介な「お歳寄り・・・」は無い訳で、それを預かった施設側には、

「徘徊・・・」

への対応に追われる職員の実態が訴えられている・・・。

 

「人(=入居者)の命が奪われる可能性がある・・・!」

から、居なくなったと判ったら直ぐに「探し・・・」に掛からなければならないが、元より「認知度・・・」が危うくなった高齢者には、それを忖度斟酌する「意識・・・」など皆無なのだから、施設側との「いたちごっこ・・・」が、日夜繰り返される事になるのだ・・・。

 取材に登場した施設の施設長などは、

「ほぼ休み無し・・・」

で奉仕して居ると云って居たが、そんな「奇特な職員・・・」ばかりが働いている訳でも無かろうから、今後の「サ高住・・・」は、増々「居住&労働環境・・・」が劣化せざるを得ないのかも識れない・・・。

 

 そんな「実態・・・」が行き詰って、勢い「入居者退去・・・」へと発展するらしいが、それは、謂わば「高齢者盥回し・・・」にも等しい

「モノ(=商品)扱い・・・」

が起き出している現実を報せていると云うことだ・・・。

 

 番組では、「サ高住」にオシドリ入居した認知症ご夫婦が、施設側の経営的事情で「退去・・・」を余儀なくされる「悲哀・・・」をクローズアップして居たが、所謂

「高齢者の選別・・・」

が起き始めていると云うことのようだった・・・。

 介護の負担が大きくなる高齢者は、たとえ部屋が空いていても入居を断る・・・。

 これが、施設側の「自衛策・・・」の実態でもある・・・。

 

 

 番組では、

「超高齢化社会の、更に一歩進んだ社会での老後(=介護)とは・・・⁈」

を副題にもしていたが、ゲストコメンテーターの「阿川佐和子氏・・・」が、

「親が90、100歳まで生きると、介護する子供も70歳はおろか80歳と云う老々介護だらけの世の中になる・・・!」

という切迫したコメントも、今は、まったく大袈裟な話では無くなって来ているのだ・・・。

 

 サ高住の魅力は、何と云ってもその「入居費(=家賃&食費込み)」の安さだ・・・。

「平均14万円/月・・・」だと、今は減額されたとは云え、まだ

「年金支給額の範囲・・・」

入居出来る高齢者が、その年金(=収入)を根拠に、此処を「終の住処・・・」と想い極めて入居して来るのだ・・・。

 

 番組のモデルになった施設では、今や「大半の入居者・・・」が認知症だと報じ、NHKが全国のサ高住6,646施設にアンケートし、回答を寄せた1,730施設の「55%・・・」が、

「認知症入居者の問題・・・」

を抱えていると回答していると云う・・・。

 

 だが、この「サ高住・・・」のもう一つの「カラクリ・・・」には、その施設のほとんどが、同時に

「訪問介護事業所を併設・・・」

していて、同時に入居者(=高齢者)から「介護報酬・・・」も得て経営を安定させるように仕組まれている事だ・・・。

 

 小生など、未だこの「高齢者医療&介護・・・」にまったく無頓着だから、まったく存じ上げないが、国のシステムに依る「介護報酬・・・」は、

要介護度「5」で上限36万円/月で、「4」が同31万円/月、「3」だと27万円/月になり、「2」では20万円/月、一番低い「1」では17万円/月と決められているのだそうだが、サ高住は、基本的に「動ける高齢者用・・・」だから、この要介護度が低い高齢者が入居している理屈になる・・・。

 

 だが、「認知症・・・」と云う「動ける高齢者・・・」を預かるサ高住は、その「負担・・・」が大きい割には介護報酬は少ない理屈だから、勢いスタッフ(=職員)への雇用環境(=給与&休暇等・・・)が整わないアンバランスが生じ、経営者側にも、想ったほどには儲からない「矛盾・・・」が生じて、労使双方に「不満・・・」は蓄積して行く悪循環が生じて来る・・・。

 

 国の職員配置基準では、

「少なくとも日中1人・・・」

となっては居るのだそうだが、その施設では、

「日中2人+夜間1人・・・」

を置いてサービスに努めていると云っていた・・・。

 職員数を増やそうにも、「赤字続き・・・」のためにそれも適わない上、下手すれば職員数を減らす選択肢も話題に上り、遂には、認知症から「徘徊・・・」を繰り返す入居者に「退居・・・」を告げなければならない事態を迎えていたが、施設を任されている施設長(=40歳・男性)の痛々しいまでの「献身的サービス・・・」に頭が下がると同時に、この「矛盾・・・」への制度の遅れ(=無認識・・・)にこそ、肚が立つ気がしたのだが・・・。

 

 だが、この「現実・・・」は、起こるべくして起こっているのだ・・・。

 

 Nipponの高齢者の「認知症の発症割合・・・」は、「85歳・・・」では、「70歳時点・・・」に比べて

「凡そ10倍以上(4.9%から55.5%へ・・・)」

に激増するのだそうだ・・・。

 

 

 そして、一方での「超高齢化・・・」で、Nipponには、今や85歳以上の方々が「806万人(=平成28年度)」もいらっしゃるのだから、その約半数の400万人が何らかの形での「認知症患者・・・」とみなされる時代を迎えて要るのだ・・・。

 従って、これからもこの「サ高住・・・」と云うお上の編み出した

「切り札終の住処賃貸住宅・・・」

では、この国の「福祉・・・」の何たるかを見せ付ける「悲哀のドラマ・・・」が繰り広げられ、時代を担い国家に貢献して下さった「大先輩たち・・・」を、「モノ扱い・・・」して憚らない

「高齢者ビジネス・・・」

が跋扈し続けるのだろう・・・。

 

 そして、その「費用・・・」を、これからの次代を担う「働ける者たち・・・」が、手を変え品を変えた

「福祉負担と云う名目の税負担・・・」

で賄わされ続けるのだ・・・。

 

 番組の中ほどからは、その「高齢者ビジネス・・・」に割り切って経営されている「サ高住・・・」の辣腕施設長が、その「割り切り方・・・」を赤裸々に語り、具体的な映像としても撮らせて居たが、それを観ている内に、気分が悪くなってしまった・・・。

 当に、高齢者を「モノ(=商品・・・)」として扱う「ビジネスライク・・・」な経営こそが、お上(=国)が目論む「高齢者対策(=ビジネス)の王道・・・」

なのだと悟らされる場面の連続である・・・。

 

 

 本来は、要介護度1か2の高齢者用だったはずの「サ高住」だが、経営的な側面から「3、4、5・・・」の高齢者を積極的に受け入れて、経営を安定させるしかない実態が、浮き彫りにされていた・・・。

 

 

 

 

 お上(=政府)のお役人が机の上で計算するほど、現実は甘くは無いのだ・・・。

 現場では、

「老は算術・・・」

で営まれている・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 いみじくもその施設長が宣った

「それをさせているのは国かなと思う・・・」

が、この番組の「答え・・・」だったと云うしか無かった・・・。

 

 

 この「超高齢化社会・・・」に向き合う時、我々は、このような「嫌な報道・・・」にも、真正面から眼を向けて向き合わなければいけないらしい・・・。

 

 

 NHKが全国の「サ高住」に対して行ったアンケートでの「実態・・・」の結論である・・・。

 その「本音・・・」には、やはり「労働(=サービス)対価・・・」が大きな問題になって居るのだ・・・。

 

 

 更に、

 

 

として、

 

 

を条件にして「たらい回し・・・」を余儀なくされる高齢者も少なく無いらしい・・・。

 

 

 

 このご夫婦は、僅か「一ヶ月間・・・」と云う条件で入居を許され、一ケ月後には、また

「靴箱一個の中の身の周りの物(=写真等の想い出だけ・・・)

を小脇に抱えて、「次の住処・・・」へと移らされて行かれた・・・。

 

 

 これが、我がNipponの高齢者(=大先輩方・・・)への「振舞い・・・」の「現実の一面・・・」である・・・。

 

「元気に老いる・・・」ことを求める一方で、そういう「老い方・・・」をした大先輩方への「謝礼・・・」が、この「仕打ち・・・」とは、あまりにも情けない・・・。

 

 何が、「生涯現役・・・」だ・・・!

 何が、「一億総活躍・・・」だ・・・!

 

 政治の「綺麗ごと・・・」とは大きく懸け離れた現実が、実際の現場では激しく起きていることを、我々は識らなければいけない・・・!