12月24日、明日はクリスマス。
大昔の神様の誕生日。
信仰無き賑わいに、私は違和感以外覚えることができない。
しかし、浮かれる聴衆に意見をする意欲も無い。
ちゅうぶらりんな気持ちのまま、いつもこの日を迎える。
「いやぁ、今日はまったく人が多いね!」
隣を歩く蒼史(そうし)が声を張り上げた。
クリスマスはかつてはミサをもって厳粛に荘厳と行われていた行事らしいのだが、この街ではただのイベントでしかない。流れる楽しげな曲、呼び込みの声、人々の会話。普通の会話をする声ではこの街の騒音にかき消されてしまうだろう。
彼の両手には大小いくつもの小奇麗にラッピングされた箱が入った大きな袋。
「そりゃあ、今日はイブだしね」
私も大声で答える。
1ヶ月ほど前から街は過剰装飾と言って良いぐらい聖誕祭一色だった。それにも関わらず、この日までプレゼントを買いのを忘れていたというのだから間抜け以外の何ものでもない。
数週間前に、24日にクリスマスパーティするから来てねと友人の娘に誘われ、もちろん参加すると即答していたのを私は目撃している。ついでに都合を聞かれることも無く私も参加することになっていた。まあ、参加する気だったから良いのだけれど。
そしてその後特にパーティについて話すことも無く今日に至り、朝食の時、ふとプレゼントを買ったのかと尋ねたら買ってないことが判明した。うなだれる蒼史を尻目に私はコーヒーをすすった。確かにここのところ仕事が立て込んで昼夜逆転、色々あったのだが忘れてたのか?……まったく。
ああ、ちなみに私と蒼史は一緒に同じマンションで暮らしてはいるが恋人でも何でもない、ただ利益が一致しただけの関係だ。
私の名前は美憂(びゆう)と言い、仲間内では略してビュウと呼ばれる。
この男、仕事の面では経験から培った勘があるとかで、大して考えもせずざっくり決定していくことができるのだが、今回のように誰かにプレゼントを買うとかそういうものがものすごく苦手だ。以前、蒼史は一人で友人の誕生日プレゼントを買いに出かけたのだが延々と丸一日悩んだ挙句決まらず、次の日に私が同行して一緒に決めたこともある。そんな訳で、夕方までにパーティ出席者計8名分のプレゼントなんて途方もない数字であり、私もここにいなきゃいけない理由もわかっていただけただろうか。
それにしても、混んでいる。
「にしても助かった、一緒に来てくれてありがとうなぁ」
「あせったあげく血迷って変なもの買っても困るだろう」
「うん、そもそも血迷って買うことも出来なかったかもしれない」
そう言って蒼史は笑った。
周囲に顔立ちの整った人が多いだけにいつもは目立たないが、一般的に見たら十分ハンサムで親しみやすい顔をしている。万人受けするだろう卑しさの無い快活な笑顔に一瞬目が吸い付けられたが、私はあわててそらした。そんな私に気づく様子も無く、蒼史は、喜んでもらえるといいなぁなんて言っている。
「そういえばさぁ、今何時?」
「3時半だ」
「ちょっと早いね。お茶してこうよ」
「パーティーあるのにか?」
「寒いじゃん」
この無邪気な笑みを前に断る術を私は知らない。
「まあ、良いけど」