卒論関係で忙しくて日記をいじる時間も小説を書く時間もなかなかとれません。


一段楽したら、ちゃんと再開したいと思います。

【紅】  くれない



(写真 : 紫陽花の咲く頃の紅)


【紅の記憶】、主人公。

紅蓮の髪、ダークレッドの瞳を持つ。


 紫陽花が咲く時期だった。
 青みがかった紫色の花が身を寄せ合い、ひしめき合う。花びらの中の柱頭は花粉を待つ。恥ずかしげも無く生殖器を広げている紫陽花の花の群れを見て、植物にも生殖の欲があるのかしら、紅は思った。
 そして、あるなら私は木以下の存在なのだろうと無味淡白に何となくそう思った。
 だって生殖の欲が無いって生きてるものとしては致命的だ。植物に欲があるとは思わないけれど、生殖しようとしているのには変わりないのだから私よりもずっと優秀な生き物だと。
 記憶に無いけれど、きっと何度も何度も見た事があるだろう紫陽花。今回の紅は初めて見たのだけれど、新鮮味も懐かし味も覚えない。
 なぜ私は延々と生きているのか。
 その答えが見つからない。
 風が吹いた。少し肌寒くて紅は白いストールを首元に手繰り寄せる。
 自身の姿を見下ろす。
 長くてとても様にならなかったスカートやハイネックのセーターが今ではちょうどぴったり。ぶかぶかだった革靴も。
 世界が全て違和感に包まれている。だってすべてが急速すぎる。
 日に日に増す困惑の中、紅はただ生きていた。
 何も望まず、生への望みさえ薄い、どうしてここにいるのかそればかりを考えていた。