若葉のころ 2 | アムール赤木 [It Happens Everyday]

若葉のころ 2

高校生活はとてもつまらないものだった。
何故かというと、おそらく自分の目指す方向じゃなかったから。
早く卒業したいと思っていた。いや、卒業しなくてもいいから早くここから抜けだしたかった。
いちばん苦しかったのは3年生の2学期の後半。秋から冬に季節が変わる頃。同時に18歳の誕生日を迎える頃だ。


進路が決まらない。
県立の工業高校なので進学組は少なくて大半が就職組。

大学進学は中学時代にあきらめている。
中学時代の実力テストで、学年で2番を取ったことが唯一の誇りだけど、2番は2番、所詮誰かの後ろでしかない。
ちょっとだけ予習復習をすれば点数が上がることはわかっていた。
周りが喜んでくれることは嬉しかったけど、勉強が身についたかどうかとは別問題。

父の死もあったから、経済的に大学進学は難しいかと思った。
その時から「いい子」をやめた。

高校の選択肢は普通科ではなくて商業高校か工業高校。
ラジオを作ったりすることを趣味にしてたので工業高校に進んだのだが、その時には既にはんだごてを握る事は少なくなっていた。
趣味が変わったのだ。

ゆえに高校生活に興味をなくしてる以上、工業高校卒業後の就職先の選択肢に興味を持つわけがない。


現実がつまらないと、より遠くの夢を見てしまう。
その夢を語ることはできない。
大笑いされるか怒られるかどっちかだ。相手にされない。
そしてさらに塞ぎこんでいってしまう。
窓を開ければ、庭にある柿の木も葉が散ってしまってる。その向こうに広がる田んぼも稲の収穫はとっくに終わってて株が残ってるだけ。
全てが冬に向かう。
僕はどこに向かえばいいんだろう?



N君は4人部屋の病室の一角のベッドで横になっていた。
右胸のちょっと下に管が通されて、その管はベッドの脇のなにやら複雑そうな機械についてる透明なアクリルのような入れ物に繋がれている。
中には真っ赤な液体。
微かに「ブーン」という機械音が聞こえる。
向こうには点滴。腕ではなく左足のすねのあたりに針が刺さっている。


「いったい何が起きたんだ!?」