若葉のころ | アムール赤木 [It Happens Everyday]

若葉のころ

3学期に入ってしまえばやることはたいしてなく、卒業式を待つばかりといったところ。
受験組はまだ大変そうだが、就職組や専門学校に早々と進路が決定してる連中は解放感いっぱいで喜々としている。

あとちょっとで堂々とタバコが吸える。あとちょっとで堂々と酒が飲める。
ほんとうはタバコも酒も20歳を過ぎてなのだが、実質は18歳で解禁といった風潮がある。
周りの連中はその解禁日が待ち遠しくてしょうがないようにも見える。

僕らはその解禁日、つまり卒業式の後でコンサートを企画していた。
会場は市民会館の中にあって、それも2000人入れる大きなホールではなくて、その10分の1くらい入る小さなホールだ。
入場料が100円を超えると入場税という税金がかかるので99円の入場料にした。あと1円はカンパとして頂く形。
チケットには「99円+1円カンパ」と書いた。

高校の音楽仲間にはもう会うことがなくなるかもしれない。
後輩もたくさん来てくれたけど、こいつらにも会うことがなくなるかもしれない。
卒業式といういわば正規のセレモニーの他に、僕らは僕らでひとつのケジメをつけた。
それがこのコンサートだったと言ってもいいかもしれない。

それでも寂しさはない。
それよりも春からの新生活への期待感のほうが大きい。
なによりも自分が大人になっていくのが楽しみだったから。

それは時代が変わっても変わらないだろう。
いつの時代であっても18歳の描く未来は無限だから。

そんな中でN君の病気が発覚した。