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■更新情報 - 2010年11月8日

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眠れぬ夜のポルカ - Deep Sleeper -

【AM0:00 -A- 廃研究所・入口】

「――ここだ。コイツがお宝が眠るとされる、魔導研究所跡だ」
「こんな辺境の地に、こんな古びた研究所があったとは……」

ヒュオオォオオォオォ……

「高い金出してやっとつかんだ情報だ。しっかり元は取るぞ」
「いえっさ!」

ヒュウオォオオオォオオォ……

「兄貴、セキュリティはうまく解除できました。行けます!」
「よぉし。ではこれより潜入する」



【AM0:30 -B- 王国特殊活動隊・詰所】

「えっきしっ」
「きたねーな。風邪なら仕事終わってからひけ」
「その仕事が終わらないから体壊してるんでしょーが」

「今夜、我々部隊の出動があるのは確かなスジの情報なんだよ」
「スジって、どこからの情報ですか」
「ウチの城に詰めてる婆さん」
「ば、婆さん?」
「あの霊媒師だよ」
「えぇえ?!」
「姫さん側近の相談役だぞ。顔はキショイが名は轟く婆さんだ。
 少々ヘンテコな話でも無下にはできんよ」
「つまりボクたち、お告げか何かで今夜の待機を指示されたわけですか?」

ヒュオオォオオオォオォオオォ……

「……今夜はひときわ寒いな」
「ぼかぁ心が寒いッス」



【AM1:00 -A- 廃研究所・エントランスホール】

…………

「真夜中の廃研究所……、薄気味悪いですね。何か出てきそう」
「誰もいないはずだ。いちゃあ困る」
「離れないでくださいね兄貴」
「きしょい。離れろ」

…………

「でかい研究所ですね」
「施設はでかいがこの研究所、たったひとりで管理してたそうでな。
 そいつが数年前に失踪して以来、ここはずっと無人なのだそうな」

…………

「いったい、何を研究していたんでしょうかね」
「魔法石の研究だ」
「魔法石?」
「特殊な結晶石だ。魔力を貯蓄して様々な用途に展開できる、魔法の媒体だよ」
「あぁ~、よく魔導師とかが持ち歩いてるアレですか?」
「そうだ。だがオレたちがこれから探すブツは、
 この研究所に納品されていたらしい、研究用の大型魔法石だ。
 よーく目ェ見開いて探せよ」



【AM1:30 -B- 王国特殊活動隊・詰所】

「あの婆さん、どんな仕事が来るのかって事も言ってたんですか?」
「一応な。なんでもこの王国のはずれにある古い研究所跡での、
 ちょっとした捜索の仕事がやってきそうだとか」
「お告げにしてはえらく具体的ですね」



【AM1:40 -A- 廃研究所・3F回廊】

「これでひと通り探しきったはずですけど……」
「簡単に見つかるようなら、とっくにどこかの機関にでも回収されてて、
 こんな廃屋なんて取り壊されてるさ。
 どこか素人にはわかりにくい場所に隠されてるんだよ。
 そいつを暴いてこそオレたち盗賊業、ってなモンだ」
「数年間、誰も見つけられなかったお宝を、今晩ボクらで見つけろと?
 ムチャですよ……」
「お宝の相場は*********くらいだそうな」
「現場百遍ですよ兄貴。さぁ行きましょ」

…………

「ん?」
「どうした」
「……あ、あそこにいるのは」
「! 誰かいるのか?!」

…………

「…………」
「あれは……ここの研究員、か?」

…………

「研究員って……、その昔、失踪したとかいう?」
「あぁ、おそらくヤツがそうだ」
「…………で、でも……」
「あぁ……」
「…………」

…………

「顔に生気がないし、なんだか体が透き通って見えるがな」

…………

「…………ぼ、ボク、もう帰っていいデスカ?」
「待て。よく見ろ」
「み、みミみ見たくない………、…え?」

…………

「き、消え、消えたた……! ヤバイですって兄貴! 早く逃げましょ!!」
「違う、消えたわけじゃない。ほれ、そこ。陰に人が通れる場所があるぞ」
「え、えぇっ?」
「……隠し部屋だ」



【AM1:50 -B- 王国特殊活動隊・詰所】

「隊長」
「なんだ?」
「出番のある場所とか、そこまでわかってるんなら、
 今から行っておけばいいんじゃないですか?」
「まだ危険だとの事だ」
「き、危険?」



【AM2:00 -A- 廃研究所・秘密研究室】

「幽霊のあとをつけるなんて、このシゴト心臓に悪すぎです。
 後生ですからおうちに帰らせてください」
「別に構わんが。ここまで来て見返りも何もいらんのならな。……ほれ、見ろよ」

…………

「う、うわ……?!」
「あれだ。あの装置にはまっている大きな石が、目的の魔法石だ」

…………

「で、でかい! これが?!」
「あぁ。大型とは聞いていたが、これほどとはな」
「かぁ、まぶしい……ッ!」
「なんとエネルギーあふれる輝きだ。
 これは名のある大魔導師も垂涎の一品だろう……きっと高く売れるぞ」
「ぼ、ボクたち、これでウッハウハですか?!」
「ウッハウハだ」
「うひょおおぉおぉおおおぉお!!!(゚∀゚)」

………ナ…

「? 何か言ったか」
「いえ?」

……ワ…ナ…

「…………」
「…………」
「…………」
「………あ、あに、兄貴……」
「まぁいい。回収するぞ、手伝え」
「は、はいッ!! で、では、せーのっ……!」






―― サ ワ ル ナ !!!



【AM2:30 -B- 王国特殊活動隊・詰所】

「隊長?」
「今、国境警備隊から我々に出動依頼が来た。
 場所はさっき言ってた王国はずれの古い研究所跡だと」
「えぇ?!」
「なんでも、無人の施設で何やら事故らしきことが起きたようだが、
 侵入者による人為的事故の可能性が考えられるので、
 そいつらの捜索も含めた現場検証をしてほしいとさ」
「うげ、ホントに婆さんの予言通りじゃないですか!」
「まったく驚きだな。行くぞ」
「婆さんスゲェ……。顔はキショイのに」



【AM2:40 -A- 廃研究所・秘密研究室】

「……う、痛ツツ…」
「おい、生きてるか?」

『……だから触るなと言ったじゃろう』

「?!」
「ひ?! ひいィ?!!」

『……見たところコソ泥のようじゃが、狙った獲物が悪かったのう』

「…………」
「で、ででデでで、出たあアアァアアァアアア(((゚Д゚)))アァアァアアアアッ!!!」
「うるさい」
「こここころころこーろーさーれーるぅううぅうぅうううう――、ほぶあッ?!!」
「黙れって。……あんた、ここの研究員か? そこの魔法石を管理していた」

『いかにも。この魔法石、見ての通り、暴発寸前の危険な状態だったのじゃよ』

「触ったとたん、爆発したようだったが」

『過充填じゃよ。
 ワシがここ隠し研究室で、石に魔力を充填していたさなか、
 情けないことに心臓発作でポックリいってしまってな。
 以来、石はここで誰に見つかることもなく、
 長年ずっとエネルギーを充填され続けておったのじゃよ』

「マジかよ……」
「いつつ……。そ、そうだ魔法石! その魔法石はどうなったんです?!」

『残念じゃな』

「……粉々か。ずいぶんとハデに散ってくれたものだな」
「希望の収入源が……。酒場のママに殺される……」



【AM2:50 -B- 廃研究所・入口】

「――ここが事故現場の、魔導研究所跡ですか」
「あぁ。さて我々の今回の任務だが、
 まずひとつはさっき言った通り、侵入者の捜索を含めた現場検証。
 そしてもうひとつは、この研究所にあるとされる魔法石の回収だ」
「魔法石?」

ヒュオオォオオオォオォオオォ……

「ここには大型の魔法石が納品されていたらしくてな。
 王国が管理のため回収しようとしたのだが、
 これがどうにも、ずっと見つけられなかったのだと。
 デリケートな品だけに、派手に施設を取り壊して探すわけにもいかんでな」
「へぇ」
「そこで今回の事件だ。
 原因はまず間違いなく、所在不明だった魔法石だとのこと。
 これでようやく所在はわかるだろうということで、
 破片でもいいからどうか見つけて回収してほしいとのお達しだ」

ヒュウオォオオオォオオォ……

「回収はいいのですけど、もう大丈夫なのでしょうね? ボクらがここに入っても。
 安全の確認は済んだのですか?」
「……それが、わざわざ便利屋の我々が呼ばれた理由だ」
「ないわー」



【AM2:55 -A- 廃研究所・秘密研究室】

「こんなクズ破片でも多少の金になればいいのだが……」
「兄貴」
「なんだ?」
「なんか、破片の様子がおかしいのですが」

ジュオオォオォオオオォ……

「むぅ? なんだか熱そうだな。というより白熱してるのか?」
「さっきから、どんどん光と熱が強くなってきてるんですよ」

『反応がさらなる反応を引き起こしているのじゃ。丸1日この状態は続くぞ』

「……仕方がない、今日はこのままズラかろう」
「ぅえ……」
「それにこれだけの騒ぎを起こしてしまったんだ。人が来るかもしれん。
 早いところここを出た方がいい」

『おいキミたち、ズラかるのもいいが、そんなことより……』



【AM2:57 -B- 廃研究所・3F回廊】

「ひどい有様ですね」
「あぁ。婆さんいわく、確かこのあたりが……あった。アレだ」
「隠し通路?! これもあの婆さんの情報ですか?」
「まぁな」
「婆さん、どこまでこの事件のことわかってるんだ……」

…………

「それにしたって、ここは暑いッスね」



【AM2:59 -A- 廃研究所・秘密研究室】

「ちょ、兄貴!」
「?!」

カアァアアアァアアァアアアアア……ッ!!!

「破片の反応が急に強くなってきてます! なんかヤバイっすよ!」
「くっ! 急げ、とっととズラかるぞ!」

『キミたち。そんな事より……』

ボッ!!

「うわ、部屋中が発火しはじめた! うわぁあああ!!」
「こっちだ!!」

『そんな事より、まずは……』

メラメラメラ……パキパキ……

「……え? あそこにあるのは………………。……ひ、ひいッ?!!」
「なんだ?!」
「こ、ここここれは?!」

メラメラメラ……メラメラメラメラ……

「これは……、人間の死体、だな」
「…………」
「そこの死んだ研究員のものか? いや、それにしてはずいぶん損傷が激し――」
「…………」
「…………」
「……兄貴」
「………………」

バキバキ……ゴオオォオォオオオオオ……!!






「な、なんでこの死体、こんなにみずみずしいんですか?」
「……………………」
「なんで、コッチにも、2体分もあるんですか?」









『……まずは、現状をよく確認したまえ』



【AM3:00 -B- 廃研究所・秘密研究室】

…………

「婆さんいわく、コイツらふたりが
 この秘密研究室に侵入し魔法石を暴発させた……とのことだ」
「ぐちゃぐちゃのコゲコゲですが」

…………

「何者なんですかコイツら? と言ってもそこまではわかりませんか」
「王国おたずね者リスト***番と***番のコソ泥だ」
「な、なんでそこまで、何から何までわかってるんですか」
「知りたいか?」
「はい」

…………

「昨日、霊媒師の婆さん宛に、コイツら当人から依頼があったからだとさ。
 自分らを回収して弔ってくれ、と」



【報告書】

21日午前2時頃、王国辺境の魔導研究所跡にて爆発事故が発生。
研究所エリア全域が施設内部からの激しい放熱現象により、しばし侵入不可の状態に。
放熱は一昼夜勢い収まらず、翌22日午前2時頃、ようやく沈静。
王国特殊活動隊による現場検証を開始する。

検証の結果、22日午前3時頃、死後24時間経過と思われる成人男性2名の遺体と、
死後数年経過した当研究所管理人思われる男性の白骨遺体を発見。
また同現場にて、爆発の原因と思われる魔法石の破片を多数確認する。

当施設では、かつて納品されていた大型の魔法石が所在不明となっており、
現場の状況から、遺体の男性2名が研究所に侵入し魔法石を発見、
何らかの原因で魔法石を暴発させ、このたびの事故を引き起こしたと見て
引き続き検証を行っている。



- 終 -
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