注目を集めた玄関には、小柄な女性が立っていた。傍らには、かりんの物とは形が異なる銃。そこにいる全員が固唾を飲んだのが分かった。
「こんなとこを隠れ家にしてたら、見つけてくださいって言ってるようなもんだ」

靴も脱がずにずかずかと入ってくる女に、誰もが注目した。

「昼間っから電気は点いてるし、話し声だって外に漏れてる」

女は一番手前に居た七瀬を一瞥してから、順番に全員を見回した。テーブル手前のスープのスプーンを手に取ると、おもむろに口に運んでから「お、美味い」と、その時だけ表情が柔らかくなる。

「もし私が殺し目的だったとしたらどうすんの? あ、これおかわりある?」
「え? あ、はい」

空になったスープ皿を七瀬に差し出して、口を拭った。そのまま椅子に腰を下ろすと、床にバッグを放り投げる。

「にしても……、六人か。他に誰か居ないよね? 居るわけないか、食事中だもんな」

新しくテーブルに置かれたスープを口にすると、女はそのまま全部を飲み干した。
その姿を、ただただ見つめる全員の瞳には、同じ疑問が浮かんでいた。

ーーこの人は、一体なにしに来たのだろう?


「……くはぁっ。美味かったよ、ごちそうさん」

全てのスープを飲み干した女が、コップの水もこれまた飲み干してから、再び立ち上がった。

「さて、ここに居たら見つかっちゃうって分かったろ? 行こうか?」
「え……?」

戸惑いを最初に口にしたのは、かりんだった。この女(ひと)は何をしたいのだろうか。そんな疑問だけが浮上する。
手にしている銃は無駄に大きかったが、不思議と恐いとは思わなかった。

「やるんなら相手するけど、あんたらそのタイプじょないよね? 現実逃避してまで楽しそうにしてんだし」

全てを見透かされてる気がしたが、かりんは、初めて同じ意見を口にする人に出会えたことに嬉しく思った。

「嫌です」

先口を切ったのは深川だった。その目はいつもの優しさはなく、鋭く険しく真剣な面待ちで女を見ていた。

「逃げるってことは、メンバーを信じていない証拠じゃないですか。貴女から逃げるんなら、まだ分かりますけど、メンバーから逃げるだなんて出来ません」

その言葉に清羅と七瀬も頷いた。女は呆れた表情でかりんを見る。

「重症だね、こりゃ……」

床に投げたバッグを拾い上げ、軽く首を傾げた女が「来たい人だけ来れば?」と言葉を投げた。

その中で、かりんが意を決して口を開こうとした時、その横から日芽香が「あたし、行きます」と口を開いた。

その言葉に一番驚いたのは、かりんであり、日芽香の横顔を三倍くらいに開いた瞳で見つめた。

「ううん、行かせてください。 大島優子さん」

溌剌とした声に、優子は、にっと微笑んでから、「ああ、来いよ」と笑った。