優子と別れた里奈とみなみは、しばらくそこに留まった後、南西に位置する集落へと足を進めた。
みなみもまた食い下がる。どうしても持って行きたいようだ。
夜には分からなかった緑の匂いが鼻を刺激し、木々の間に透けて見えた海は、あざやかなブルーに輝いていた。
集落にたどり着いた頃には、八時を回っていた。
小さな商店へと足を運ぶと、二人は一言謝りながら商品へと手を出した。里奈は小さなナイフやロープ、そしてロウソクとライター。みなみは冷蔵庫の中にある飲み物と保存の効きそうな乾物のお菓子。
「ねえ、これまだ飲めるかなー?」
缶のパッケージの裏をぐるりと返してみなみが呟く。里奈が黒目だけ動かして、「消費期限、裏に書いてる」と呟いた。
みなみが缶を逆さまにすると、「大丈夫みたい」と嬉しそうにバッグに入れた。
まるでピクニックみたいだと、みなみを見て里奈は思う。ほんの数時間前にメンバーの一人が死んだのを見たのが嘘みたいに。今朝の放送では四人が死んだと言う、それも、実は嘘なんじゃないだろうか。
そんな事を考えながら、里奈は手に持ったロープをバッグに詰め込んだ。
ちらっと視界に映った飴やキャラメルも入れた。
「生駒ちゃんもお菓子いるんだ?」
みなみの言葉に里奈は目を細めて笑った。これからどうなるか分からない。と、言うより、ロープにしろ、ナイフにしろ、何に使おうかすら決めていない。もしかしたら必要になるかもしれないと、手にしただけだった。性格上、全て形から入ってしまう。
しばらく商品を物色した二人が次に取った行動は、商店の奥の部屋で休むことだった。
体の小さな二人にとって、山道は辛い。休める時に休まないと、この先体力が持つはずがないと、里奈は考えた。
まだ電気も通っているこの集落で、里奈はお湯を沸かして商品のラーメンを作った。みなみはそれに喜び、食器と箸を用意し、出来上がった少し伸びたラーメンを二人で啜った。
「美味しいね?」
みなみの問い掛けに里奈が頷く。
「いっぱいあるから持っていこうか?」
「だめ。お湯がない」
みなみの提案を里奈がバッサリと切った。みなみが唇を尖らせて不満顔を見せたが、見ないことにした。
「水ならあるじゃん」
みなみもまた食い下がる。どうしても持って行きたいようだ。
「お湯沸かすのに、火起こさなきゃいけないんだよ? 煙出ちゃうよ? そしたら見つかっちゃうよ? 見つかったらーー」
見つかったら、どうなると言うんだ? 里奈は言葉を紡ぐのをやめた。仲間を信じているなら煙なんてどうでもいいはずなのに、むしろ見つかって、皆が集まってくれた方が好都合なはずなのに、どこかで信じられない部分があるのかもしれない。どこかで恐怖を感じているのかもしれない。
そんな自分自身が情けないとさえ、思った。
「そっかぁ、じゃあもっとゆっくり食べよう、っと」
諦めてくれたのか、みなみが呑気な声で言ってから、ゆっくりとラーメンを啜った。