『松井玲奈と矢神久美が到着しましたー! こいつらはやる気になってるから気をつけろよー』
嬉しそうな戸賀崎の声が島中に響く。当然、島に着いたばかりのこの二人の耳にもそれは届いていた。
「そんなの嘘だよ……」船から突き飛ばされた久美の表情が少しだけ青くなっている。「私、死にたくないのに」
同じく、船から突き飛ばされた玲奈が、久美の手を取って、森の中へと引っ張りだした。
「いやっ、なに?」
「あそこにいちゃ危ないから」振りほどこうとする手を、しっかりと掴んで離さない。「到着したってことは、海岸沿いのどこかにいるってバラしてるようなものなんだよ」
死にたいなら別だけど。と付け加えた。しかもやる気になってると思われている。これは、二人に取っては不利なのか、有利なのか、玲奈は思案していた。
どちらにしろ、相手によっては戦わないといけない。船に乗ってるときに聞かされた、死亡者の名前と禁止エリア。それを地図に書き込んで、バッグの中を確認した。
「今の本当かな?」
「どうだろう……」
仁藤萌乃と指原莉乃の耳にも、今の放送は聞こえていた。
やる気になっている二人が島に到着したというのに、何の不安も持たない萌乃に、莉乃は少しだけ疑心暗鬼になっている。それは、どこからか銃声が聴こえてきたときも同じだった。
莉乃は誰かが死んだのではないかと心配をしているときに、萌乃は冷静に銃声の方向を確認して行き先の変更を思案していた。
どうして、そうも冷静でいられるのか判らない。もしかしたら、萌乃はこの下らないゲームを楽しんでいるのではないかと思えてきた。
「――聞いてる?」
「え? あ、ごめん。ボーっとしてた」
俯いたままの莉乃に、萌乃が顔を覗きこんで呆れた表情をした。
「ヘリコプターの音も、その存在も見えなかったってことは、多分船でここまで来てるはずなんだよね」
そこまで言ったとき、莉乃が「何のこと?」と尋ねた。萌乃は再び呆れた顔で、「さっき到着した二人のこと」と怒った。
「あ、ああ……」そういうことか。溜息にも似た呟きを漏らす。
「だとすると、海岸沿いのどこかにいると思うわけ」
「もしかして、萌乃ちゃんはその二人を捜し出して、その……ころ、殺そうとか」
「まさか。さっしー、そんなこと考えてたわけ? そうじゃなくて、出会わないようにする方法を考えてるんじゃん」
「だよね……?」
幾分、ホッと胸を撫で下ろした莉乃が、萌乃の広げた地図にようやく目を向けた。
そのとき、地図の向こう側。大きな木が二本立っている傍に、人影が見えたような気がして、目を見開かせた。
話の途中で萌乃が、その異変に気づく。急いで地図を折りたたむと、バッグを肩に提げて、莉乃の後ろに立った。
「も、萌乃ちゃん……?」
自分を盾にされたのだと勘違いした莉乃が、声を震わせて振り向こうとする。振り向こうとしたところに、右手に堅い感触が触れた。
「これ、正面に突きつけて」萌乃が耳元でそう囁く。
それは、萌乃の武器のエアガンだった。莉乃の武器のワルサーP99は後ろのポケットに差したままなのだが、なぜそれを渡してくれなかったのか疑問だった。
茂みががさがさと動いたとき、莉乃は言われた通り、エアガンを前に突きつけた。