「あーいう変な生き物は、冒険クラブに必要だよね?」
「えー、キュラちゃんは、まいのペットにするんだからね」
莉乃と麻衣が彩佳の奪い合いをしてる中、彩佳が夏海にそっと近づいてきて話しかけてきた。
「あの、ちょっとお願いがあるんだけど」
「な、なんですか……」
「ちょっとだけでいいんで、血ぃ吸わせてくれない?」
「…………嫌です」
やっぱり。とでも言うかのように、彩佳ががっくりと肩を落とす。そして、今度は標的を萌乃に変え、トボトボと歩いていった。
その萌乃も、最初は笑顔で受け答えをしているようであったが、夏海のときよりもしつこくお願いしてくる彩佳に、切れたようで、表情から笑顔が消えていた。
「んだとコラァ! なんでテメェなんかに血を吸わせなきゃいけねぇんだよ! 目の前に死に掛けの患者が居たって、わたしの血は一滴もやらねえよ!」
「――――イタタタタタタタ……ご、ごめんなさい。もう、もう言いませんから……だれ、誰かたす、たすけ助けて……」
彩佳の鼻の穴に指を突っ込んだ萌乃の形相は、般若のように恐ろしかった。夏海に差し伸べられた手は、しばらくすると、ぐったりと重力に身を委ねるように下ろされた。
「……あのさ、血じゃないとダメなの? いや、ほら、よく漫画とかでだったら、血の代わりにトマトジュースとかで代用したりするからさ。だから、なんとなくそれでもいいのかなぁ?って」
「本当は人間の生き血がいいんだけど……でも、しょうがないから別に焼肉でもいい――ほんと、ごめんなさい。調子こきすぎました」
夏海が振り上げたハリセンに、彩佳が物凄く怯えたような顔をして、腕で頭をかばった。どうやら、萌乃にされたことが、トラウマになったらしい。
「もう、トマトジュースでもなんでもいいですから、何か飲ませてください。お腹が空いちゃって……」
「うーん……ここにはそんな物ないしなぁ……」
「ねえ、カキ氷食べたら?」
イチゴシロップをたっぷりかけたカキ氷を、智実が彩佳に差し出す。その彩佳は、赤いイチゴシロップに反応した。
「これでいい! 赤けりゃなんでもいい。とりあえず、これ飲ませて」
智実のリュックの中からイチゴシロップだけを奪い取ると、それを逆さまにして飲み干した。
「ぷはぁ…………甘すぎだよこれ」
「一気飲みとかするからだよ……」
夏海が呆れていると、どうやら、莉乃と麻衣の彩佳の奪い合いに決着がついたようだった。才加が、大きな声で「勝者、さっしー!」と叫んでいた。
不満顔の麻衣に対し、「もえのちゃん、やったよ」と莉乃が喜びの声を上げている。
「さあ、キュラちゃんはうちらの物になったから。今日はもう帰ろう」
「ん? どういうこと?」
「あ、冒険クラブのリーダーのりのちゃんです。さっしーって呼んでね。今日から、キュラちゃんは私達の仲間になったから。どうぞよろしくね。あ、それと、この子がサブリーダーのもえのちゃん」
「よろしく。仁藤萌乃って言います。気軽に、もえの様って呼んでね」
「…………おやすみ」
「ちょ、棺に戻らないで!」
一瞬だけ見せた、萌乃の冷ややかな目つきを彩佳は見逃さなかった。背筋が凍りつきそうになるとはこの事だ。棺の中でもう少し眠りにつこうとしたところ、莉乃が思わず止めに入った。
「それで、この子がクリス」
「やあ。今度はブルーハワイでも飲む?」
「この子はペンギンさんね。でも、そのうち、私がペンギンになると思うけど」
「ないない。それはない。絶対似合わないもん」
智実が片手をぶんぶんと左右に振ると、莉乃が、「その服くれ」と智実の服を引っ張った。それに対し、智実が「無理」「嫌だ」と何度も莉乃の手を振りほどこうとした。
正直、変な人たちに見つかってしまったなぁ、と思いながらも、彩佳はそれに従うことにした。
決して、萌乃が恐かったわけではない。
「あー、なっちゃーん。まいもドラキュラ欲しいよー」
「あ、あんたには、はるごんがいるでしょうが……」
「ペンギンも取られちゃったもんなぁ。今度、なっちゃんにあの衣装着せるかぁ」
「ちょ、本当に勘弁して……」
キュラこと、梅田彩佳は、こうして冒険クラブの仲間になった。
つづく
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不良グループに決裂の時?
副番長不在?
そのときヒーロー部は?
次回
「さようなら。副番長大島優子」
お楽しみに