漆黒の闇の中、公園のベンチを挟んで向かい合う二人の女の姿があった。
凛と尖った三日月の切っ先が、妖しく二人を照らしている。
「では、五つとも盗まれたと言うの?」
「盗まれたんじゃなくて、奪われたのよ」
「そんなことはどうでもいい。アレが人間の手に渡るなんて……」
微かに揺れる木の枝の先から、二人の前にはらりと葉っぱが落ちた。一人の女の視線がそれに釣られて地面に落ちる。
その時、落ちた葉が、重力に逆らうが如く宙に浮いた。
その上に右手を翳すと、手のひらに引き寄せられるように一枚の葉が舞い上がった。
「もちろんこの事は上には報告したの?」
「マリリンもある意味お堅いよね? どっかの誰かさんみたいに」
「ふんっ、リナティンが柔軟すぎるだけじゃないの?」
マリコの手のひらに吸い寄せられた葉っぱが形を変えはじめる。
手のひらを返して一度それを包み込むと、一枚の葉が緑色の鳥へと姿を変えた。
その鳥のくちばしに唇を押し当て、何かを呟いた後、マリコはそれを空へと放した。
月の光を目指すかのように飛びだった一話の鳥は、闇に包まれた後姿を消した。
「とにかく、アレを取り戻さないことには計画は先に進まないの」
「じゃあ、マリリンが頑張って取り戻してみてよ。人間を侮ってたら痛い目見るかもよ?」
「リナティンみたいに?」
くくくっ、嫌味を込めたマリコの笑みを横目で軽く流したリナが、唇の端を持ち上げて胸のペンダントに手を掛けた。
薄く開いた唇から、胸一杯に息を吸い込む。
呼吸を止めた時、胸のペンダントが眩い光を放ち、指先から漏れる光がリナを包んだ。
「変身っ!」
白く輝く光は、リナを包むと、闇と同じように濃い群青色の光へと色を変えた。
漆黒の大きな翼が拡がる。マリコの瞳が大きく見開かれたとき、リナは翼を羽ばたかせ、闇へと消えていった。
―――――――――――
「このペンダントは一体……」
自室のベッドの上で、仰向けのまま首から下げたペンダントを豆電球に翳して見ているのは、峯岸だった。
右手で持ち上げたソレは、天使をモチーフにした造りになっており、その天使の両手には子供の生首を施した赤い宝石がキラリと光っていた。
あの戦いのあと、5人でもう一度変身を試みたのだが、何度やっても結果は同じで、誰一人あの姿になることはなかった。
「夢、なんかじゃないよね? わたしたちは本当に……」
ゴロン、と横を向いた先に、月の光をシルエットにした天使が空を舞っているのが窓から見えた。
慌てて起き上がる峯岸の視線の端っこに、赤い光が見えた。
気付いて自身の胸元を覗き込む。
僅かに赤く光るそのペンダントが、危険信号のようにゆっくりと瞬いていた。
凛と尖った三日月の切っ先が、妖しく二人を照らしている。
「では、五つとも盗まれたと言うの?」
「盗まれたんじゃなくて、奪われたのよ」
「そんなことはどうでもいい。アレが人間の手に渡るなんて……」
微かに揺れる木の枝の先から、二人の前にはらりと葉っぱが落ちた。一人の女の視線がそれに釣られて地面に落ちる。
その時、落ちた葉が、重力に逆らうが如く宙に浮いた。
その上に右手を翳すと、手のひらに引き寄せられるように一枚の葉が舞い上がった。
「もちろんこの事は上には報告したの?」
「マリリンもある意味お堅いよね? どっかの誰かさんみたいに」
「ふんっ、リナティンが柔軟すぎるだけじゃないの?」
マリコの手のひらに吸い寄せられた葉っぱが形を変えはじめる。
手のひらを返して一度それを包み込むと、一枚の葉が緑色の鳥へと姿を変えた。
その鳥のくちばしに唇を押し当て、何かを呟いた後、マリコはそれを空へと放した。
月の光を目指すかのように飛びだった一話の鳥は、闇に包まれた後姿を消した。
「とにかく、アレを取り戻さないことには計画は先に進まないの」
「じゃあ、マリリンが頑張って取り戻してみてよ。人間を侮ってたら痛い目見るかもよ?」
「リナティンみたいに?」
くくくっ、嫌味を込めたマリコの笑みを横目で軽く流したリナが、唇の端を持ち上げて胸のペンダントに手を掛けた。
薄く開いた唇から、胸一杯に息を吸い込む。
呼吸を止めた時、胸のペンダントが眩い光を放ち、指先から漏れる光がリナを包んだ。
「変身っ!」
白く輝く光は、リナを包むと、闇と同じように濃い群青色の光へと色を変えた。
漆黒の大きな翼が拡がる。マリコの瞳が大きく見開かれたとき、リナは翼を羽ばたかせ、闇へと消えていった。
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「このペンダントは一体……」
自室のベッドの上で、仰向けのまま首から下げたペンダントを豆電球に翳して見ているのは、峯岸だった。
右手で持ち上げたソレは、天使をモチーフにした造りになっており、その天使の両手には子供の生首を施した赤い宝石がキラリと光っていた。
あの戦いのあと、5人でもう一度変身を試みたのだが、何度やっても結果は同じで、誰一人あの姿になることはなかった。
「夢、なんかじゃないよね? わたしたちは本当に……」
ゴロン、と横を向いた先に、月の光をシルエットにした天使が空を舞っているのが窓から見えた。
慌てて起き上がる峯岸の視線の端っこに、赤い光が見えた。
気付いて自身の胸元を覗き込む。
僅かに赤く光るそのペンダントが、危険信号のようにゆっくりと瞬いていた。