大島麻衣の場合。
いつものように、愛犬と遥香を遊ばせている麻衣。
本気で遥香が犬から逃げているところで、麻衣の携帯が鳴った。
画面には非通知の文字。不思議に思い、通話をボタンを押す。
「ほーい、もしもしぃ?」
「私、メリーさん。今あなたのマンションの前にいるの」
「まいんちマンションじゃないよ」
「え……」
「まいんち来るんなら、住所教えるね? えっとねぇ、大宇宙銀河系の太陽系、第三惑星地ky……」
「間違えました」
ツーツー……
「あれ? 切れた」
「誰ですか?」
天井にぶら下がった遥香を見上げながら、麻衣が首を捻ってみせた。
秋元才加の場合。
麻衣の家から数十メートル離れたアパートに、才加は一人暮らしをしている。
家の中でトレーニングをしていると、携帯が鳴った。
画面にはもちろん非通知の文字。才加が通話ボタンを押す。
「おーっす、誰だ?」
「私、メリーさん。今学校にいるの」
「そっかそっか、気をつけて帰れよ。最近物騒だからな。じゃあな」
「いや、あの」
ツーツー……
「誰だったんだ? 今の」
板野友美の場合。
部屋のテレビでDVDを鑑賞していると、友美の携帯が鳴る。
やはり画面には非通知の文字。
不振に思うこともなく、普通に通話ボタンを押した。
「もしもしぃ」
「私、メリーさん――」
「ボク、ともちん。こんにちわ」
「え? いや、あの……こんにちわ……えと、今、あなたの家の前にいるの」
「ほんとに? 早くおいでよ、一緒に遊ぼう!」
ツーツー……
「あれ? なんで切れたんだろ?」
小林香菜の場合。
何度爆破したのだろうか、香菜の部屋だけが何度も修理した跡が見える。
今日もいつものように発明品を造ることに没頭していると、携帯が鳴った。
画面には非通知の文字。面倒くさそうに通話ボタンを押す。
「私、メリ――」
「さっき発明した電話のほうに掛けてみてくれないかな? 番号言うよ。いい?」
「え? 今、あなたの――」
「――じゃあ、掛けなおしてね? よろしく」
ツーツー……
それから3時間過ぎまで電話が鳴るのを香菜は待ち続けた。
渡辺麻友の場合。
夏休みの宿題をせっせと片付けてるように見える麻友の机の上には、『夏休みの宿題提出延期のご連絡とお詫び』というプリントが制作途中のまま放置されてある。
その机の上の携帯が……鳴らなかった。
「あ、非通知から掛かってきてる? でも、大丈夫。非通知は拒否してるからね」
麻友は、思ったよりとても賢い子のようだ。
石田晴香の場合。
部屋中に設置された鏡と携帯充電器の数々。それらに囲まれながら、晴香は写真を撮るか、撮った写真の整理を行っていた。
一息付こうと、携帯をカメラモードにしたとき、着信が鳴った。
画面には非通知の文字。通話ボタンを押す。
「私、メリーさん。今、あなたの家の玄関の――」
「その話長くなります?」
「え?」
「用件なら、メールを送ってください。撮影の邪魔です」
「いや、あの……」
ツーツー……
シャッター音が部屋に響いた。
佐伯美香の場合。
学校の近くのマンションの8階。そこに美香の家があった。もちろん一人暮らしだ。
だだっ広い部屋には、布団が一枚だけ敷かれていて、他には何もなかった。
唯一ある携帯電話が、2回目の着信を奏でた。嬉しさに通話ボタンを押す。
「だれだれ?」
「私、メリーさん」
「おー、外人さんってやつだ? すごいね、日本語ペラペラなんだね? ねえねえ、どこの国の人なの? 声は若そうだけど、歳はいくつ? そうだ、わたしと友達に――――あれ? 切れた?」
ツーツー……
ちょっぴり寂しかったけど、電話が鳴ったことに感動を覚えた瞬間だった。
平嶋夏海の場合。
ごく普通の一軒家の、ごく普通の部屋。
本日は、部活動がなかったため少しだけ気分よく過ごせたらしく、部屋で音楽を聴きながら宿題を片付けていた。
そこに一本の電話が鳴る。ちょっとだけ嫌な予感を感じながら、非通知と表示された画面を見つめて、通話ボタンを押す。
「私、メリーさん。今、あなたの家の玄関の前にいるの」
「……まいまいでしょ?」
「え?」
「いい加減にしてよね? 何? 才加やともちんもそこにいるの? 香菜の発明品か何かで声変えたって、すぐに判るんだから! 悪戯するなら時間帯ってものを考えて頂戴よね!? ったく、いっつもいっつも……ブツブツ」
「すみません……」
ツーツー……
「ん? 今日はやけに素直だったな? ま、いっか」
今日もヒーロー部は平和です。