気がつくと、大きな広場のような場所に着いていた。


志津香の適当な道案内は、行き止まりに着くばかりだったため、途中から志津香の言う道の反対ばかりを突き進んだおかげだ。

東京ドーム何個分あるんだろうかという程の広さ。天井は高すぎて見えない。

時折吹く風が夏海の首筋を撫ぜるように通り過ぎ、思わず身震いをしてしまうほどだった。


「何か聴こえる……」

「モンスターかな?モンスターかな?」

「なんであんたは、そんなにウキウキできんの?」


わくわくしている麻衣の表情は、遠足前夜の子供のような顔だった。夏海が呆れて溜息をつく。


「あの……」

「どうしたの?まゆゆ」

「あそこに大きなトカゲみたいなのがいるんですけど、見間違いですよね?」


麻友が指差したほうに懐中電灯の光を当てると、確かに何かが存在していた。それはとても大きな生物。

今は寝ているようだが、起き上がれば30メートルほどの大きさじゃないだろうか。


「まゆゆ。あれはねトカゲじゃなくて、ドラゴンって言うんだよ」

「そうだぞ。またの名を、龍って言うんだ」

「へー。オメたちモンスターに詳しいんだな。あれがドラゴンかぁ」

「てことは、願い事叶えてくれるかな? 私、今のぐっさんを優しいぐっさんと取り替えてもらいたんだけど」


言うまでも無く頭をど突かれた4人は、並んだまま頭を押さえていた。


「ったく、あんたたち……」

「ぐおーん!!」

「お?起きた」

「なっちゃんが大きい声出すからだよ」

「そだぞ。オメが責任とって倒して来いよな」

「シェンロンやーい!ぐっさんを優しい子にしておくれー!!」


夏海がツッコミを炸裂する前に、ドラゴンの元へと駆けていった生来が、プチっと足で潰されてしまった。


「死んだ」


麻衣がポツリと呟く。それにはさすがに夏海もツッコミを入れなかった。状況が状況だけに。


「どうするんですか?」

「そだなー。オメたちが食われてる間に、オラだけ逃げるってのは――ないです。ごめんなさい」


ジロリと夏海に睨まれた志津香が肩をすぼめる。ドラゴンが再び雄叫びを上げ、足元の生来に鼻を近づけた。


「食べるのかな? そしたら未来人死んじゃう?」

「そうだなー。ま、私たちが死ぬわけじゃないからいいんじゃない?」

「いや、順番があの子からってだけで、結局死んじゃうんだよ?」


夏海の冷静なツッコミに麻衣と才加が両の手を打ち鳴らした。


「それはまずいよね。じゃあ、才加いっちょ倒してきてよ」

「いや、あれは無理だ。ごめん」


大抵の麻衣のお願い事は引き受けてきた才加だったが、さすがに身の丈30メートものあるドラゴンを倒すことには、丁重に断りを入れた。


「このままだと、たなみんさん食べられちゃいますねぇ」

「まゆゆ、意外と冷静だね……」


はは……。苦笑いでこの光景を眺めていると、右手側の壁が爆発とともに、バラバラと崩壊した。


「ゲホッゲホッ……だ、だから、お前の発明は胡散臭いって何回も言っただろうが!!」

「違うよ。最初から壁を壊すための発明だったんだよ」

「うそつけっ!!」


ゴンッ。拳が香菜頭に振り下ろされる。煙の向こう側から現れたのは、玲菜組だった。


「あれ?まいまい? 才加もまゆゆもしーちゃんもいるよ。あと、未来人が大きなイグアナに食べられそうになってる」

「イグアナじゃなくて、ドラゴンね。あと、わたしを無視しないでくれる?」


明らかに3回ほど目が合ったにも関わらず、無視をした友美に夏海が冷静にツッコンだ。


「あ、先輩方もレベル上げしてるんですか?見てくださいよ。私、レベル64まで上がったんですよ!」

「え……?」

「ともちんさんもはるきゃんさんも、みんなレベルアップしました」


夏海が首から提げたカードを奪い取るように見た。そこには確かにレベル64になった珠理奈のカードがあった。


「ボクは51だけどね。はるきゃんが44で、香菜が29。ぐっさんは102だよ」


自慢げに見せたカードには確かにそう書いてあった。これであのドラゴンが倒せる。そう確信した夏海がうれしそうに口を開いた。


「ねえ――」

「あ、それは無理ですよ」


口を開きかけた瞬間に、晴香が断りをいれた。写メのシャッター音が虚しくも鳴り響く。


「そうですよね。あんな大きなドラゴンはさすがに倒せませんよ」

「でも、たなみんが……」


今にも口を開こうとせんドラゴンを見ながら夏海が眉をへの字の下げた。


「そういや、ぐっさん消えたね」


麻衣が辺りをキョrキョロと見渡す。ドラゴンの足元、生来が倒れている場所に玲菜が走って向かっていた。


「さすが同居人……あんなに嫌ってたのに、ピンチのときはやっぱり――」


バシンッ!生来の元へ着いた玲菜が、持っている棍棒で思いっきり頭を殴った。


「そんなとこで寝るな! ったく、あんたはいっつも人に迷惑かけてばっかり――ん?」


ツッコミを入れた玲菜の頭上に影が出来る。見上げると、そこには大きく口を開けたドラゴンが二人を食らいつこうとしていた。


「あぶないっ!」


夏海の叫びも虚しく、二人を頭上からパクリと……




いや、ドラゴンが吹っ飛んでいた。吹っ飛んだといっても、食らいつこうとしていた頭を、誰かが蹴っ飛ばしたように見えた。


「この先に財宝があるんだよな? こいつ倒して、オレが財宝を頂くから」

「えっと……あの子誰だっけ?」

「忘れんなよ!オレだよオレ!宮澤佐江!!」


だから、こいつらと関わるのは嫌なんだ……。最後に小さくそう言ったのを、夏海は聞き逃さなかった。そして、夏海も小さく「ごめん」と呟いた。


「お前らとなら、この化け物も倒せると思ってきたんだけどな」

「いや、無理だよ。常識的に考えて」

「才加とか言ったっけ?お前、オレと互角だったじゃねえか。あとそこの携帯で写メばっかり取ってるナルシストも」


ここでようやく晴香が佐江に気づいた。顔色が変わる。見る見る内に表情に笑顔がなくなった晴香が、佐江にとび蹴りを繰り出していた。


「この携帯殺しがーっ!よくもあたしの前に顔を出せたな!!」

「ちょ、待てって! 今はそれどころじゃないだろうが! まずはあの化け物倒すのが先決」

「うるさーーーい!!」


晴香の中で、携帯殺しの異名を持たされた佐江。その敵討ちとばかりに晴香は佐江に攻撃を続けた。

唖然とするドラゴンが雄叫びを上げて、炎を吐き出す。


「消化開始」

「また変な発明……?」

「大丈夫だよ。これは火薬の量が今までの8倍くらいだから」

「消化する発明品がなんで、火薬背負ってるのよ……」


カタカタカタ。消化活動をしにドラゴンの元へとゆっくり進む香菜の発明品は、ドラゴンにすぐさま見つかりパクリと食べられた。


その瞬間、ものすごい爆発音とともに、ドラゴンが倒れた。どうやら、口の中で爆発したようだった。


「財宝ってこれかな?」

「なんで持ってんの……」


晴香と佐江のバトルの間に気を取られてる内に、麻衣と才加が財宝を持ってきていた。

光り輝く黄金に目を奪われる。手を出そうとした生来の頭を玲菜がど突いたのは、言うまでも無い。






こうして、GWの探検は幕を閉じた。


後に、才加はこう語った。





「正直、佐江はいらんかった」



と。






つづく。






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ヒーロー部の歴史に迫る?


初代ヒーロー部部長登場に一同唖然!?


まいまいは何代目の部長なの?



次回

「呼ばれて飛び出てはるごん参上!!」


お楽しみに