「みなさん、服装が乱れているようで」


明香がそれぞれの服装を見つめてから、鋏をチョキチョキと動かしてニヤケた。メガネの奥の瞳は明らかに嬉しそうだった。

夏海がゴクリと喉を鳴らしたとき、麻衣が右手を上げた。


「み、みんな! なかやん対策の例の物を出す時がきたよ!」


例の物……? 夏海が首を傾げて麻衣たちの動向を見守っていると、それぞれが自分の鞄や机の引き出しからメガネを取り出して、装着した。

それを見た明香の顔は、いつになくパッと明るく輝きはじめた。


「会長、服装違反が見当たりません。見当たるのは我が姉妹たちだけです」

「あんた風紀委員失格だよ……」


由紀が肩をがっくりと落とすと、ため息をついた。

夏海以外のヒーロー部が全員メガネを掛けているのを見て、夏海は何故か疎外感を感じた。


「もしかして、わたし仲間はずれにされてる?」

「そ、そんなことないよ。なっちゃんのメガネも用意してるからね。はい」


麻衣が優しく夏海の耳に掛けてくれたメガネが何故か嬉しかった。そう、そのメガネに付け鼻と髭が付いてさえいなければ。


「わー、まいまいありがとう。これでわたしもみんなの仲間……って、いらねえよっ、こんなの!」


夏海が鼻メガネを地面に叩きつけると、麻衣の頭をハリセンで叩いた。麻衣が頭を押さえて涙ぐんでいた。


「ノリツッコミまで習得してるとは、中々やるじゃない」


夏海のツッコミ技術に、何故か由紀が悔しがった。薫が面倒臭そうに呆れて、近くの椅子に腰掛けて、「で、この後の展開どうするの?」と訊ねた。


「この後の展開って……なかやんは、もう遣えないし……まぁちゃんは、トイレから帰ってこないし……三人で頑張らない?」

「嫌だ」


薫が即答すると、机に突っ伏した。助けを求めるように由紀が智美に視線を送る。だが、智美は相変わらず友美の変貌ぶりに頭を抱えていた。











一方その頃、トイレ内では。



5つある個室の内、奥から2番目の個室が閉まっていた。わざわざその個室の前に進むと、真奈美がノックをした。


「誰か入ってるー? ねー? だれー?」

「ええ? 誰って、え? ええ?」


ほかの4つの個室が空いてるのにも関わらず、ノックをされたことと、名前を訊かれたことで戸惑いを隠せない少女が動揺した。


「ねー、う○こしてるの?う○こ? ねー?」

「いや、う○こじゃない……って、女の子があんまり連呼する言葉じゃないと思うんだけど……」

「なんだ、ぐっさんじゃん」

「おいっ! 上から覗くな!! しかも、なんで少しだけガッカリみたいな顔してんだよ!!」


隣の個室から壁を這い上がった真奈美が、上から玲菜を見下ろしてつまらなさそうな顔をしていた。

玲菜が慌ててスカートを上まで上げると、扉を開けた。


「ぐっさん、こんなとこで何してんの?」

「何って……トイレに来てすることって言ったら決まってるでしょ……」

「う○こか喫煙だよね。わかるよ」

「ちがーーっう!! 小のほうだよ小! てか、鼻を摘んで喋るなーっ!」


右手人差し指と親指で鼻を摘んだ真奈美が、左手で寄らないでと意思表示をしてしまい、玲菜の怒りの鉄建が頭上に振り下ろされてしまった。


「痛いよ……ぐすっ、ぐすっ……」

「あ、ごめん。いつもの勢いでつい……」

「のぐっさんのバカーっ!」


瞳の涙を浮かべた真奈美が、そう叫んでトイレから走って出て行ってしまった。


「あの……のぐっさんってのは止めてくれないかな……? てか、何しにトイレに来たの?」


ちんぷんかんぷんな真奈美の行動に玲菜は唖然とした表情のまましばらく立ち尽くしていた。










戻って、ヒーロー部部室。



「ともちん、こんな部辞めてよ。そして、また昔みたいに戻ってよ!」

「ともーみちゃん……」


いつの間にか、問題が智美と友美の友情についてに移り変わってしまい、由紀はどうしていいのか困っていた。


「昔みたいに……アリの巣に熱湯注いでたあの時の様に……三歩進んで二歩下がるで登校して遅刻しなかったあの頃のように……放送室で勝手に『DJともちんの生放送で喋りまくるだぴょん』を放送したにも関わらず、音声がオフのままだったため、ただ一人で喋っただけに終わったあの頃のように……戻ってよ!」


うん。今とあんま変わらない。ていうか、昔のほうが酷かったんじゃないの?夏海が苦笑いでそう考えていると、友美がオロオロと智美の周りを回っていた。そんな智美は蹲って泣いている。


「あー、うー、どうしよう……ともーみちゃん泣かないでよ。ボクはともーみちゃんも好きだけど、ヒーロー部も好きなんだ」

「やっぱり、ともよりヒーロー部を取るんだ! この浮気者! うわーん」


浮気ってあんた……これ、なんて昼メロ? 呆れた夏海が肩を落としていると、何故か才加が智美のもとへ傍寄った。


「可愛い顔に涙は似合わないよ。さあ、顔を上げて笑ってごらん」

「秋元さん……?」

「そしてここにサインと判子を……おぐばっ」

「その請求書はどこから出した! 詐欺まがいなことをするなっ」


才加の顔面にハリセンが叩きつけられる。その才加の右手には、どこから出したのか請求書が握られていた。

それには、『給水タンク修理費』と記されている。


「あーあ、もうちょっとで給水タンクの修理費をこいつに支払わせることが出来たってのに……」

「おー、さやかあったまいいー!」

「はいはい、まいまいも変なとこで学習しないでね」


夏海が請求書を破り捨てると、床に放り投げた。カタンと音がしたのに気づいて振り返る。


「ま、まゆゆ、どうしたの……?」

「平嶋。ゴミはゴミ箱に入れてくれないかな? あと、生徒会だかなんだか知らないけど、そこの紙吹雪はちゃんと掃除してくれんだよね?」


掃いても掃いてもゴミが増え続ける部室に、いい加減麻友がキレてしまった。目が座っている。


「さあ、みんなで大人しく掃除でもしましょうか?」

「は、はい」


生徒会も含め、満場一致で大掃除が始まった。普段大人しい子ほど、怒ると恐い。それを地で行ってる麻友に、みんなが気を遣いながらその日は部室を綺麗にした。








あ、そうそう。智美と友美の問題は、なんやかんや色々あって解決したそうです。










つづく









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携帯電話復活ではるきゃんも復活!


名古屋からの超新星現る?


珠理奈って変換しづらい……orz


次回、

「ヒーロー部に最大の敵現る!?」




お楽しみに。