「そうだよ。最初っからここで待ってればよかったんじゃん」

焼け野原に姿を変えたKの本拠地に、1時間ほど前から秋元才加は佇んでいた。

「みんな生き残ってるかねぇ?」

才加の捜し求めていた優子もまた、同時刻に本拠地に戻ってきていた。才加も優子も、本拠地が焼け払われていることには、さほど興味は示さなかった。むしろ、先に戻ってきていた夏希のほうが愕然とした表情で膝を着いていた。

「あー、早くあの車乗りてぇ」

「ダメだよ。みんなが戻ってくるまで待ってなきゃ」

「待つってもなぁ……もしかして、みんな死んじゃってるかもしんないじゃん」

「佐江も?」

「う……それは……」優子の問いに才加が口ごもる。

あの佐江がそう簡単に殺られるわけがない。才加はつまんなさそうに足元の石を蹴飛ばした。

「まあ、気長に待ってようよ。どうせこの島からは逃げられないんだからさ」

崩れた木材の上に腰を降ろした優子が、足元のバッグに指先を引っ掛けて引っ張った。


「あれ……ともーみ?」

同じく崩れたレンガの上に腰を降ろそうとした才加が、木々の奥を指差して呟いた。

優子が指し示した方向に懐中電灯を照らす。そこには、眩しさで目を細めた智美の姿があった。

疲れているのか、やたらと呼吸が荒い。才加たちの近くに来ると、崩れるように座り込んだ。その表情に違和感を感じる。最初に気づいたのは、優子だった。

「ともーみ、泣いてる?」

その言葉で、先ほどから俯いたままだった真奈美が顔を上げた。その真奈美の頬にも、雫の流れる痕がついている。

「どうしたどうした? ともちんでも殺したか?」才加の冗談に智美が俯く。

「え? マジ……?」

一瞬、異様な空気が漂った。優子が立ち上がって智美の背中を優しく叩いてから、耳元で囁くように呟いた。

「おめでとう。よくやったじゃん」

その智美の背中は僅かだが震えている。それは、恐怖とか後悔とかではなく、武者震いだったが、本人にその自覚はまだ、ない。

「真奈美も殺してるし。立派だよあんた達」

才加がわざとらしく、大げさに笑った。研究生以外未だに一人も殺せてない夏希が目を伏せる。


「そうだ。私考えたんだけどさ」

バッグの中から取り出した手榴弾をポケットに仕舞いながら、優子が声を上げた。

「これって、チーム戦じゃん? 個々で行動して戦うのもいいんだけどさ、もっと戦争らしく、チームで戦わない?」

「どうやって?」

才加が首を傾げる。そして、「めんどくさいことなら、パスさせてもらうよ」と付け加えた。

「ほら、今の状態じゃ、みんなが生きてるかどうかすら判んないじゃん? だから、ちゃんと配置とか決めてさ、連絡も取り合えるようにしたほうがいいと思うんだよね」

優子が地図を広げて、地面にそれと同じ絵を描いた。そして、その地図上にそれぞれ架空の配置を付け足す。

そのやりとりを見ていた夏希は思う。佐江、才加、優子、この三人はとても危険だ。危険が故に味方につけると頼もしい。そして、三人の中で一番頭が切れるのは優子だとも。

みんながそれぞれ殺し合いに出発をしたとき、足手まといになりそうな真奈美を、率先して連れて行くと言ったのも優子だった。その真奈美は死ぬことなく、今まさに無傷でここにいる。それどころか、一人殺したらしい。優子の作戦は、常に一手先を読んでるようだ。

そして、才加。彼女の体力は底が知れない。山道を走り回ってきた割に、元気がありすぎだ。疲れた疲れたと口に出してるが、本当に疲れてたらそんな言葉すら出てこないはずだった。

最後に佐江だが。彼女に関しては、何も言うことはない。恐らく、一番危険なのは彼女なのだから。

夏希はバレないように、そっと溜息をついた。そして、恵が死んだ今この三人に続く四人目は自分がなるのだ、と心に誓った。