子供というのは、どうしようもないくらい子供だ。



夜の公園と言うのは不思議な空間だ。風で揺れるブランコが、昼の賑やかさを名残惜しんでいるように見てくる。

「待ってよらぶたん」

唇を引き結んだ愛佳が振り返った。ああ、お願いだからそんな顔をしないで。夏海は肩で息をしながら愛佳の腕を取った。

「ごめん――」

「何か用ですか?」

素直に謝る夏海に、唇を結んだままの愛佳が横を向いて「ふんっ」と言った。

だから、そんな顔をしないでよ。困って、愛佳の腕を掴む手の力を緩めてしまった。


振り解かない。振り解けない。振り解きたくない。


それが何を意図するのか、経験則の浅い夏海には判らなかった。


地面に視線を落としたままの愛佳の腕を引っ張って、ベンチに誘いやった。並んで腰を掛ける。

「ごねんね」

「別に」

素っ気無い愛佳の態度に夏海はため息をついた。

「夜の公園ってなんか不気味だね」

「なっちゃんほどじゃないよ」

「ええ!」

さり気なく呟かれた言葉に、夏海が苦笑いをした。「ちょっと酷いよね……」口を尖らせて言うと、愛佳がようやく笑った。どうやら少しは機嫌がよくなったようだ。


「今日、満月だ」

愛佳が空を見上げて言った。「ほんとだ」同じように見上げた空には、愛佳の言うとおり満月が雲から顔を出していた。

落ちてきそうな星空と言うほどではなかったが、夏海にはそう見えていた。


「なっちゃん」

「ん?」

「星、好き?」


どこか悪戯に笑う彼女は、そう言って夏海の顔を覗きこんだ。

「そうだね。好きかも」

ふふ、と笑いながら気の抜けた笑顔で答えた。愛佳の機嫌はいつの間にか完全に良くなっているみたいで、「もう、怒ってないの?」と冗談にからかうのは、今日だけは止めておこうと思った。


「なっちゃん」

「なに?」

「……ごめんね」


人は夜に惹かれるのだそうだ。闇は全て隠してくれるから。だから正直になれるのだそうだ。


「いいよ」

少し驚いた顔をした夏海が、笑んでからもう一度空を見上げる。それに倣って愛佳も再び空を見上げた。


大きな満月が闇を色濃く塗りたくり、星たちの瞬きがそれをより強調していた。


近くで野良猫が鳴いた。



「……ありがと」








おわり