「ねえ、いつまでここにいなきゃ行けないの?」
米沢瑠美が、抱えていた膝に乗せた顎を離して言った。先ほどから眉間にシワを寄せたままの一美が「んー……」と唸っている。
「シンディ、シワになっちゃうよ」
自身のおでこを指差した愛佳が言ってから笑った。
それに関しては何も言わずに、一美は口を開いた。
「このままだと、いずれ死んじゃう気がするんだ」
その言葉に反応するかのように、皆が一斉に振り向いた。一美が首を傾げて再び「んー」と唸って続けた。
「なんて言ったらいいのかな……このまま誰にも見つからず隠れて居られたとしても、食料だって限界があるし……でも、他のチームに合うのは怖いよね……」
話がまとまらないのか、何が言いたいのか判らない一美が頭を横に傾けて、唸りだした。
「秋元先生たちを捜せばいいんじゃない?」
一美の隣で言いのけたは、愛佳だった。当たり前のことを言うような顔でさらに続ける。
「お願いしてこの島から出してもらおうよ」
愛佳の提案は、最も簡略で安全な作戦のように思えた。思えただけで、決して安全だという保障はなかった。
例えば、その秋元先生を捜してる間に他のチームに出会わないとは限らないし、出会わずに見つかったとしても、その秋元本人から殺されないとは限らないからだった。
それでも、一美はその提案に掛けて見たくなってきた。
「秋元先生だって人の子だもんね。話せば判ってくれそうな気がする」
気がするのではなく、そうであって欲しいという切実な願いだった。
「じゃあ、バラバラで捜すの?」
麻友が不安そうに口をへの字に下げ、膝を抱えた。
「あー、そうだねぇ……少数に分かれたほうがいいかもねぇ」
「ちょっと待って」平嶋が言葉を挟む。「私、はるごん捜す」
柏木が反応して眉を上げた。平嶋と目が合って慌てて視線を逸らした。
「どう考えてもおかしいよ。はるごんが本当に仲間を殺すと思う?」
「思わないね」
平嶋の必死な問いに、呆気らかんと答えたのは、やはり愛佳だった。
「だからあいちゃんもなっちゃんに着いて行く」
その顔はなんだか嬉しそうにも見えて、一美はなんだか調子が狂うような気がして、一度頭をブンブンと振った。
「はるごんがズッキーを殺したなんて思いたくないけどさ……」
言ったのは生来だった。しきりに柏木を気にしながら、続ける。
「でも、見たって言うし……」
「本人の口からも聞いたしねえ」
松岡由紀が噛んでいたガムをプクっと膨らませる。割れた風船を舌で起用に口の中へ入れると、再び噛み始めた。
「ねえ、私ゆきりんと一緒に行きたいんだけどいい?」
松岡が一美ではなく柏木に直接尋ねる。横目で松岡を見てから、柏木は首だけでコクンと頷いた。
「よし、決まり」
立ち上がってお尻を叩いた松岡が、バッグを一つ持ち上げ中に入っていた銃をズボンの前に差し込んだ。
「ねえ、私達の目的は殺し合いじゃない。それだけは忘れないで」
松岡の腕を捕まえた一美が上目遣いでそう言った。少しだけ驚いた顔をした松岡が、顔を引きつらせて「わかってるよ」と言ってから再び身支度を始めた。
それに習うように、皆が重たい腰を持ち上げてそれぞれ出かける用意を始める。