大の字になって寝転がりながら、明日香は空を見上げていた。その隣で足をブランとさせて座っている亜美菜が、波を見つめて欠伸をした。
防波堤のコンクリートは冷たく、止むことを知らない風もやはり冷たかった。
波の音が耳に心地よさを与える。横に広げていた手を明日香が持ち上げて、指差した。
「あ、UFO!」
明日香が呟き、その方向を亜美菜が見上げた。
「いないよ」
「うそだもん」
即答した明日香を横目で睨みつけながら、唇を尖らせて再び波に目をやった。
「ごめんね」
「別にいいよ。引っかかった私が悪いんだし」
そんなことで謝らないでよ、と照れ臭そうにそっぽを向いた亜美菜に、明日香が「ううん」と呟いた。
「今日はごめんね」
体を起こして亜美菜の横顔を見つめた。
その意味を理解しなかったわけじゃない。ただ、なんとなく気恥ずかしくて亜美菜は何も答えなかった。
ポケットの中で完全に冷え切ってしまった缶コーヒーのプルタブを開けて、明日香に差し出した。
受け取ると一口だけ飲んで、亜美菜に差し出す。
全部飲んでいいよ、そんな顔をした亜美菜に明日香が小さく首を振ってから、缶を手の中に包み込ませた。
触れた指が赤く冷たい。缶を傾け一気に飲み干すと、今度は亜美菜が寝転がった。
「今度は3人で来たいねえ」
何気ないその言葉が明日香の胸を締め付ける。
「今日が終われば、また3人に戻れるじゃん」
「ん? なに?」
小さなその呟きは、亜美菜の耳には届かなかったようで、寝転がったまま「ん?」と明日香を見ていた。
「なんでもなぁい!」
そんな亜美菜を愛おしく思え、明日香は再び体を倒すと、大の字に寝転がった。
「何だよそれぇ」
二人の笑い声が空高く舞い上がってから、止んだ。
目を閉じると、波の音が規則正しく鳴いているのが耳に届いた。
ゆらゆら揺れる波のように、二人の体も揺れているように思えた。
「やっぱり。今度は3人で来ようね」
その呟きに、亜美菜が目を閉じたまま笑んだ。
自然と繋がれた二人の手から、お互いの体温が伝わる。
太陽が役目を終えようと沈む頃、二人は深い夢の中へと落ちて行った。
おわり