チームKの本拠地のすぐ側に、佳代たちは潜んでいた。これからどう乗り込むか決めかねていた。
「人の気配あんましなくない? いないってことないよね?」
陽菜が頭を出して、両手で双眼鏡みたいに輪を作ってから覗き込んだ。佳代が思いつめたように眉間にシワを持ち上げる。
「ちょっと私見てくる」
立ち上がった佳代の腕を麻里子が強く引っ張って再び座らせた。
「待って!逃げるつもりはないよね?」
その言葉に佳代が少しだけ呆れた顔をしてから、ため息をついた。
「逃げることよりも、裏切られることを心配したら?」
皮肉たぷりにそう言うと、「一緒に行く?」とテントを親指で差すと、「殺されない保障はないけど」と笑った。
人差し指を唇に当てて何かを考えていた陽菜の顔が、急に不敵な笑みを作って、佳代にサブマシンガン(UZI)の銃口を突きつけた。
佳代が驚いた表情で陽菜を見つめる。目だけで「冗談でしょ?」と伝えると。笑んだまま首を左右に振った。
「ノンティは今から人質ね」
今度は背中から銃を突きつけられた佳代が、「あぁ……そういうことか」と口の中だけで呟くと、ホッと胸を撫で下ろして「オーケー!」と言った。
わざとらしく足音を鳴らしてテントの入り口で立ち止まる。そっと入り口から顔を出した麻里子がほのぼのとした言い方で「どーもー」と挨拶をした。
中には、椅子に座って驚いた顔をした恵と、地面に寄り添って座っている恵令奈、明日香、理沙の姿があった。
「麻里子……?」
恵が慌てて立ち上がろうとしたのを、麻里子がマシンガンの銃口を向けて静止した。
「誰が動いていいって言った?」
その後ろから佳代が顔を出し、さらにその後ろから陽菜が覗き込むように顔を出した。
「ノンティ……あんた裏切ったわね!」
恵令奈が泣きそうな顔で俯いているのを抱きしめながら、明日香が麻里子たちを睨み付けた。
「あー、これ? 人質のつもりだたんだけどさ」辺りを見回して笑いながら続けた。「そんなの必要なかったみたい」
寄り添って固まってる3人は、どうみても殺し合いに反対してそうだと判断した麻里子が、理沙の腕を掴んで持ち上げた。その腕を咄嗟に掴んだのは明日香で、その目は雛を守る母鳥のようにも見え、麻里子は軽く苦笑いをする。
「なんかヘコむなあ」
「大丈夫だよ」言ったのは佳代だった。「麻里子たちは敵じゃないから」
そう言うと、明日香に頷いて精一杯の笑みを作った。
「とりあえず、この3人はAの本拠地に連れて帰るとして……問題はコイツだな」
再び銃口を恵に向けた麻里子が、「どうする?」と陽菜に尋ねる。
「好きにしたら? 私達先に戻ってるから」
その言葉に麻里子は笑みを零したくなるのを、グッと押さえ恵の隣の椅子に腰を掛けた。もちろん銃口は突きつけたまま。
「めーたんには聞きたいことが沢山あるからね。1時間くらい経ったら私も戻るから」
陽菜に目配せをして、麻里子は「何から聞こっかな~?」と考えるふりをした。
陽菜たちがテントから出て行くのをその目で追ってから、ようやく堪えていた笑みを零す。
そして恵の耳に唇を持って行き、小さく呟いた。
「ジ・エンド」
驚いて声を上げようとした恵の喉下にナイフを突きつけた。
「だから、動くなって言っただろ」
勢いよく噴出した血のシャワーを頭から浴びながら、麻里子が「あーあ。これじゃ殺したのバレちゃうじゃん」と言った。
「この服借りるね」
既に息絶えた恵に向かって話しかける麻里子の姿は、異様な光景に見えた。
1時間後、全てのテントに火を点けてから麻里子は踵を返した。