「な、なんですか?」

皆がいる大きなテントの外に、囲むように小さなテントがいくつかある中の一つ、薫は亜樹を連れ出した。中には毛布が折りたたまれて隅のほうへ置いてあり、恐らく仮眠室のようなとこだろう。

「もしかして、気づいてる?」

「何がですか?」

薫の遠まわしな言い方に亜樹が小首を傾げた。少しだけ目を泳がせた薫が再び亜樹に焦点を合わせると、周りを気にしながらポケットからメモ帳とペンを取り出した。可愛らしいキャラクターのそれは、支給品ではなく薫の私物だった。

懐中電灯でそれを照らし、メモ帳を開いて何やらペンで書き始めた。亜樹がそれを怪訝そうな顔で見ていた。

書き終わったのだろうか、薫がメモ帳を亜樹のほうへと差し出すと、懐中電灯で読みやすいように照らす。

〝盗聴されてるの気づいてるんでしょ?〟

亜樹が顔を上げた。その表情は〝盗聴〟の文字に驚いたそれではなく、薫がそれに気づいてることを知った驚きだった。薫が口元に笑みを作って再び何かを書き始めた。

〝多分、首輪に盗聴機が付いてるんだと思う〟

その文字を見て、亜樹は首輪の存在を思い出して右手で触れた。ヒヤリと伝わる鉄の感触が背筋を震わせた。

〝もしかしたらカメラもどこかに隠されてるかも〟

そこで亜樹は薫からペンを取り上げて、スラスラと何やらメモ帳に書いた。

〝それは、ないと思います〟

今度は薫が首を傾げる番だった。続けて亜樹が書いた。

〝戸賀崎さんは一番最初の放送のときに「寝てるヤツがいたら近くの人が起こしてやれよ」って言いました〟

それを見て、薫が「なるほど」と呟いた。それから今度は薫がペンを取った。

〝このことは皆に言わないでね〟

亜樹が首を傾げて〝?〟と書いた。

〝今、このチームはいい感じだから、これ以上問題を抱え込ませたくない〟

顔を上げた亜樹が、コクリと頷いて笑んだ。

〝私はこれからこの首輪の外し方を調べようと思う〟

亜樹が「どうやって?」と口の動きだけで薫に伝えた。薫は少しだけ考えてペンを取った。

〝パソコンでもあればハッキングできるんだけど・・・〟


「あんた達、何やってんのそんなとこでコソコソと」

「びゃあっ!」

突然の訪問者に亜樹が奇妙な声を上げ飛び上がった。薫が咄嗟にメモ帳をポケットに隠すと毛布を引っ張り体に巻きつけてから寝転んだ。

「なんか疲れちゃったから、みんなには悪いけど寝ようかなと思って」

目を閉じ、欠伸の真似事をして見せた。麻衣が眉をへの字に下げ、口を開いた。

「そっかあ、じゃあかおりんはそこで寝てな。亜樹ちゃんは悪いけどこれから出発してもらうね」

「え?」

それだけ言うと、麻衣が右手でくいくいと手招きをしてから、中央

のテントへと向かった。キョトンとした表情の亜樹がそれに習って麻衣の後を追った。


「亜樹ちゃんにはBの捜索を続行してもらうから」

「よろしくぅ」

ちょいテンション高めで亜樹の肩を叩いた高橋が、小柄な体に不釣合いなショットガンを抱えていた。

亜樹と高橋組の他に、敦子・亜美菜組、峯岸・美穂組の3チーム。

Kの本拠地に向かうのは佳代以外に、麻里子と陽菜の2人に決まった。

「じゃあ、私達はここで待ってるから、12時間後の放送までに帰って来なかったら今度は私達が皆を捜索するから」

そう言った麻衣の顔は笑ってはいたが、なんだか哀しそうな顔をしていた。