「研究生公演があるからって・・・」
「なんで私達こんな目にあってるんですか? テレビ番組の収録ですか? だとしたら、性質が悪すぎます」
「お、大声ださないでよ、私達だって何がなにやら・・・ねぇ?」
一気にまくし立てる有馬優茄に浦野一美が両耳を塞いでたじろぐと、平嶋夏海のほうを向いて同意を求めた。
ふう、と息を吐き終えた優茄が、今度は瞳に涙を浮かべてその場にしゃがみ込むと、「もう、やだ」と呟いた。
「多分、番組収録かなにかだよ。だって殺し合いなんかあるわけないじゃん」
平嶋が慰めるように石田晴香の肩を叩いた。叩かれた本人は、慰めになってなかったようで、俯いたまま動こうとしなかった。
その隣で鈴木菜絵が足でなにやら地面に文字を書いていた。仲川遙香が不思議そうにそれを見つめている。
「ズッキー、なにやってんの?」
その疑問に最初に口を開いたのは、多田愛佳だった。菜絵の目の前にしゃがみ込むと、その書かれた文字を読み上げた。
「こ・・・ろ・・・す・・・?」読み上げたあと、顔を上げた。見上げた果てにあったのは、菜絵の笑顔。愛佳は一瞬表情が凍りつき、動くことができなかった。
「殺すって・・・」
一美が苦笑いで口を開くと、菜絵が笑いながら愛佳の頭を撫でるように叩いた。
「『ころすけ』って書こうとしてただけじゃないですか。やだなぁ、もう」そう言ってから、右足で最後に「け」と乱暴に書いた。
一美と平嶋がお互いの目を見合わせると、何かを確認するように口を開いた。
「3人は、殺し合いのこと知ってるの?」
視線を一美の方へチラっと向けた優茄が、立ち上がってゆっくりと喋りだした。
「箱の中に押し込められたときに聞きました・・・・でも、そのときはパニックで意味が判らなくて・・・」
「本当に殺しあうんですかね?」
「そんなわけないじゃん! 冗談止めてよ!」
菜絵が明るい口調で言うと、優茄が怒鳴りつけた。へらへらと笑う菜絵を柏木由紀は先ほどからずっと睨みつけていた。
「これがどんな意図で始まったのか判らないけどさ、殺し合いなんて本当にさせるわけないじゃん――――もし、もし本当でも、人を簡単に殺せる人なんていないよ。だって、仲間なんだよ・・・」
早乙女美樹は、先ほど菜絵が文字を書いていた辺りの地面を見つめてからそう呟いた。
「そ、そうだよ!メンバー同士で殺し合いなんて出来るわけ―――」先程から俯いていた渡辺麻友が、顔を上げて言った。その声は僅かに震えていて、言ったあと再び俯いてしまった。
「あの~、武器ってこれですよね?」
いつの間にテントの中に入ってたのか、菜絵がサブマシンガン(H&K54)を片手に構えて嬉しそうに撃つ真似をする。
「危ないから止めて!」それを止めようとする平嶋に、銃口をわざと向けて笑ってから「冗談ですよ」と言った。
悪戯をする子供を相手にしたように、平嶋が「ふう・・・」とため息をつく。
「さて、それが本物かどうかはともかく、これから私達はどうしたらいいか考えよう」
一美のこの一言で、皆が一斉に黙って考えた。未だにへらへら笑う菜絵と、それをジッと見つめている柏木を除いて。
「あいつは癌だ・・・」
誰かがそう呟いたのを仲谷明香は聞き逃さなかった。言った本人を見る。
明香はこれから始まるであろう事態に不安と恐怖を感じはじめていた。