「・・・じゃあ、あの銃声は、佐江だったんだ」
峯岸が肩を落とし、落胆した。麻友は信じられないと言った表情で、口を押さえていた。
「そう・・・少なくとも、佐江はやる気になってる」優子が地面に視線を落とした。
「れいにゃんも、殺されちゃった・・・」
思いつめたような顔で、峯岸を見てから言った。
「みぃちゃんは? みぃちゃん達は、なにをしようとしてたの?」
優子が峯岸と麻友を交互に見やる。
「私達は・・・才加、才加を捜してたんだ」
「才加? なんで?」優子が食い入るように峯岸を見つめた。その大きな瞳には「?」の色が大きく映し出せれていた。
「それは・・・一番信用出来そうだから」
力強い眼差しで、優子の瞳を見据えた。それに応えるように、優子がニッと笑った。
「あの、思ったんですけど」
麻友が律儀にも右手を挙げて口を開いた。3人が一斉に振り向く。
「もしかして・・・秋元さんなら、宮澤さんを止めることが出来るんじゃないですか?」あの二人仲良かったみたいですし。と続けた。
峯岸が、なるほど、と言うようにポンと手を叩いた。
「そう、かな・・・?」麻友に向かってそう言ったのは、智美だった。
智美は、れいなが殺されるときの、佐江の異質な笑みを思い出して、背中がゾッとするのを感じた。
自身の身体を抱え込むように、抱く智美に、優子が「大丈夫?」と手を背中に回して、顔を覗きこんだ。
「でも、才加なら――」峯岸が口を開きかけたとき、優子が遮るように割り込んだ。
「私達は見ちゃったんだよね。佐江が豹変した姿を・・・」
峯岸のと麻友を交互に見ると、今度は二人の向こう側の木の陰を見つめた。
「いくら才加でも、あの子を止めるのは無理だと思う。佐江のあの顔・・・」
そこまで言うと、優子はスッと顔を伏せた。その頬に、涙が流れたような気がした。
「でも、才加はまだ生きてるんだよ。佐江を止めることは無理でも、私達の味方にはなってくれるよ」必ず。そう言ってから、みなみは立ち上がった。
優子の視界に峯岸の足が映った。そのまま視線を上に向けると、峯岸がニコっと笑みを作っていた。釣られて優子も笑んだ。
「生きてるのは、才加だけじゃないよ」
口を開いたのは、智美だった。3人が智美のほうに顔を向けた。
「ずっと気になってたことがあるの。放送で名前が呼ばれる度に・・・」
智美が3人の顔を見渡してから、俯いた。3人は黙って耳を傾けた。
「そりゃあ、殺された子たちの名前を呼ぶような放送は聞きたくなかったよ・・・でも・・・」
肩がが振るえ、智美の目から大粒の涙が零れていた。麻友がハンカチを差し出すと、黙ってそれを受け取った。
「えれぴょんと、まぁちゃんの名前が呼ばれてないの。別に、名前を呼ばれるのを期待してるとかじゃなく・・・ひっく・・・」
最後は嗚咽で声にならなかったが、3人には、智美が何を言いたかったのか、十分過ぎるほど判った。
優子に守られていた知美でさえ、恐い思いを何度もして、恐怖を感じているというのに、年少の恵令奈と真奈美が、もしかして一人で怯えているのではないかと、心配していたのだろう。
その流した涙は、智美の優しさが生んだ涙だった。
「捜さなきゃいけないのは、才加だけじゃないんだよね」
智美の頭をゆっくりと撫ぜながら、峯岸が優しく微笑んだ。優子は黙ってそれを見つめていた。
麻友はというと、両膝を抱え、そこに顎を乗せて、離れ離れになってしまった、平嶋と愛佳のことを心配していた。その表情は、ひどく寂しげだった。