「戸賀崎」
唯一島にある学校の教室の中、さきほどからコンピューターの前に座っていた戸賀崎が椅子を回転させ、秋元を見た。
「現状はどうなってる?」
秋元がコーヒーを啜った。
「えと、先ほど、佐藤亜美菜と佐伯美香の二人が宮澤によって殺されました」
「二人だけか?」
「はい」
呼吸を吐くように、ふむ、とつぶやいたあと、背もたれに仰け反った。
「あ、そういえば秋元・・・いや、秋元才加が島を脱出しようと企んでるみたいですが」
秋元の顔が険しくなったと、「ほう」とだけ言ったあと、またコーヒーを啜った。
「宮澤かな」コーヒーのカップをテーブルに置くと、秋元が小さくつぶやいた。
「なにがですか?」
戸賀崎がキョトンとした顔で聞き返す。
「優勝者だよ。お前は誰だと思う?」
秋元の顔はやけに楽しそうだった。戸賀崎はしばらく考えたあと、「意外と大島優子辺りが優勝するんじゃないですかね?」と応えた。
「まあ、出来れば芸能人として実力のあるやつが、生き残ってくれればいいんだけどな」
くくっと笑ったあと、秋元は再びコーヒーカップを持ち上げて、中身がないのに気づいてから、戸賀崎のコーヒーを半分、自分のカップの中に注いだ。



水の入ったペットボトルの大半が消費されてしまっていた。
真夏日よりと言う事もあるのだが、才加の傷の治療と、針と糸の消毒に大半の水を使ってしまっていた。
集落に行けば水ぐらいあるだろうと、才加の提案で集落に向かうことにした。
なるべくゆっくりと、山道を十分に警戒しながら歩き進んだ。
パンッ。乾いた音が鳴り響いた。驚いてその方向に顔を向けると、そこには夏希が357マグナムを構えて立っていた。
「真奈美伏せて!」才加がショットガンを構えた。「なっち辞めて! 私たちは戦う気なんてないから!」
才加の声は夏希に届いていないのか、夏希は尚も発砲し続ける。
仕方ないと、才加がショットガンを夏希に向けたとき、恵令奈が才加の袖を引っ張った。
「あれ、あれ! あそこ見て」恵令奈が指差す方向、夏希の後方には、仲谷明香と野口玲菜の二人が目を見開いて立っていた。
「二人とも、こっちに来ちゃダメ! 逃げて!」
才加の叫び声に、夏希が振り向く。「あ、あんた達も、私を殺しにきたの?」パンッ。
夏希の放った銃弾が玲菜の肩口に直撃した。
「え・・・? ええ!?」明香が驚いて両手で口を押さえる。さらにもう一発の銃弾が、今度は明香のこめかみに穴を空けた。
「辞めてなっち!」才加が叫ぶ。
夏希が玲菜に近寄る。「くそっ」才加がショットガンを放った。
威嚇のつもりで放ったそれは、初めて受ける衝撃から才加の身体は仰け反り、不覚にも玲菜の全身に風穴を空けてしまった。
夏希が才加のほうを振り返る。357マグナムを構えた後、狙いを定めるように片目を瞑った。
バンッ。発砲音が辺りに広がる。夏希の右手から357マグナムがポトリと地面に転がった。
「な・・・なんで・・・?」夏希が胸に手を当てると、べったりと血が溢れ出していた。
膝を付き、そのまま崩れるように倒れた。
「ご、ごめん、なさい・・・」
才加が声がするほうに振り返ると、両手にしっかりとモーゼルM712を握り締めている恵令奈の姿があった。銃口からは薄く煙が吐き出していた。
恵令奈の目から、ポタポタと涙が零れていた。才加は恵令奈に近づくと、右手で恵令奈の頭を強く抱きしめた。
うっううう・・・と才加の胸の中で嗚咽を上げる恵令奈を見下ろし、こんな小さな子にまで殺し合いをさせる、このゲームを恨んだ。