え…やだ…ここどこ?
なんか頭が重い…。
……か、起きて。
…やか。
「才加!」
名前を呼ばれたことと、身体を揺さぶられたことで、才加は目を覚ました。
ようやく着いたのだろうか。眠ってから物凄く時間が経ったような気がする。
心配そうに「大丈夫?」と言う優子に、左手で自分の頭を押さえながら、もう片方の手で大丈夫だよという手振りをした。
頭を押さえていた手を、ゆっくりと降ろした。
首筋辺りに来た時、指先に違和感を感じた。
優子の首元を見やる。
首輪? 鉄製の黒っぽい首輪の様な物体が着いていた。
周りを見渡すと、他のメンバー達にも同じ様な首輪。
そして、ここは……教室?
学校の教室なのか、それとも、教室を模したスタジオのセットなのだろうか?
怯えた目をしたメンバーと、これから起こるのかもしれない、なんらかのサプライズに浮かれるメンバー。
ほとんどのメンバーが目を覚ました時、教室の入口の扉が、ガラガラと勢いよくレールの上を滑って、開いた。
まず、迷彩柄の軍服を着た男が二人、姿勢を正して入ってくる。手には銃らしき物を持っている。
それに続いて、秋元先生の姿が現われた。
私達を一瞥すると、目の前の教卓の前まで無表情のまま歩いた。
そして、最後に戸ヶ崎さん。
私達と目を合わせることなく、秋元先生の隣りに立った。
なんだろう、この重苦しい空気は。
そして、あの軍服の男達は何の為にいるのだろう。
隣りの優子が、才加の服の裾を掴んだ。
その手は微かだが、震えているような気がした。
「みんな、こんばんわ」
秋元先生が口を開いた。
「こんばんわ」
もう一度、口を開く。今度は少しだけ語調を強めていた。
「挨拶ぐらい出来ないのか!」
戸賀崎が教卓を掌で叩く。
ぱらぱらと挨拶をする声が聞こえた。
「声が小さい!」
「こんばんわ」
二度目の怒号により、全員の声が揃って挨拶をした。
才加は、こんばんわと言う挨拶で、今が夜なのだと確信した。
ポケットの携帯電話がなくなっていることは、既に確認済みだった。
壁には止まったままの掛け時計。
時間を知りたかった才加にとって、今の挨拶は有り難かった。
再び静まる教室。
秋元先生が軽く咳払いをした。
「みんな聞いて欲しい。
今から、みんなで殺し合いをしてもらう」
言った後、口元だけで笑みを作った。
「先生、そう言う冗談はやめてください」
笑いながら口にしたのは、佳代だった。
「前フリもなしにそんなこと言っても、面白くもなんともないですよ」
前へ一歩踏み出すと、夏希の肩に肘を乗せクスクスと笑った。
瞬間、パンッ!と言う乾いた音が教室に響いた。
夏希の肩に乗せられた腕が、ズルリとこぼれ落ちた。
横たわる佳代の頭から流れる液体が、血だと言うのに気付くのに時間はかからなかった。
夏希が叫ぶ前に、誰かが堰を切ったように叫んだ。
それを境に、佳代から離れるように皆が後退る。
横たわったまま動かない相方を目の前に、夏希は崩れるように膝を着いて佳代を抱き締めた。
「もういいか?
それじゃ、ルールを説明する。戸賀崎」
秋元先生の指示で、戸賀崎がテレビとビデオをセッティングする。
「ねえ、どういうこと?
ノンティ死んだんだよ。
なんで、先生も戸賀崎さんも平気な顔をしてるんですか?」
震える声で疑問を投げ掛けたのは、優子だった。
「殺し合いってなんなんですか?」
「今から説明するから黙ってろ」
秋元先生がくるりと背中を向けた。
軍服の男が銃を構える。
ビデオの再生ボタンを押した。
5秒程砂嵐が続いたあと、真っ白な背景が映る。
画面端からピョンッと少女が現われた。
『映ってます?大丈夫ですか?じゃあ行きます』
画面の中の少女が何かを確認した後、喋り始めた。