夏の空は高い。
わたあめにも似た、白く柔らかそうな入道雲が、地上に陰を作る。
自己主張するかのように、光と熱を強める太陽が、才加の肌を焼き付けた。
バスの中、真ん中よりも少し前の席で、才加は窓の外を眺めていた。
遠くの方に見える光の乱反射。
それが海だと気付かせてくれたのは、後ろの席に座る恵令奈だった。
「あーっ、海だっ!」
この一言により、大半のメンバーの意識は窓の外に向けられた。
「わー、すごーい」
「海行きたーい」
「ほら、見てあれ」
「あっ、船だーっ」
こんな会話が、車中のあちこちから聞こえてきた。
「食べる?」
突如隣りの席から向けられた声。
振り返ると、お菓子の箱を才加に差し出して笑顔を浮かべる佐江が居た。
「あー、ありがと」
箱の中から、お菓子を一つだけ摘み取り、半分だけ口に放り込んだ。
「元気ないね」
佐江が顔を覗き込む。
「うん、なんか眠くて」
佐江に向けて発した言葉だったが、才加の視線は窓の外に向けられていた。
ちょっと、素っ気無い態度だったかな?と思ったが、佐江は別に気にした風でもなく、「そっか」と言い、通路の向こうの優子たちの輪の中に入っていった。
再び才加が窓の外に視線を向ける。
先程より近くなった、光の乱反射のその向こう、空と海の境目を見ていた。
メンバー達の海への関心は、いつの間にかなくなっていたようだった。