大学時代の恩師で昨年他界した松原秀一先生の本をわが社で出す。『フランス文化万華鏡』というタイトルにした。時々、フランス語も出てきて、校正に手間どり、編集時間がかなりかかってしまったが、やっと仕上がった。先生は、フランスに生まれ、日本にいるよりフランスに暮らしたほうが長いのではないかと思えるほど向こうに行っていた。パリの大学やグランゼコールでも何度も教鞭をとっていた。45年ほどの付き合いで、どれだけいろいろの話をしたか知れないのに、まったく聴いたことがないことばかりが書いてある。フランス文学の専門家でなくても、読んでもらえる作りにしたけれど、さて、どういう結果になるやら・・・・。
先週、作家でジャーナリストのドラ・トーザン(写真)の勉強会が神楽坂であり、初めて参加した。彼女とも結構長い付き合いだが、いつもワインが邪魔をしてまじめに彼女の話を聴いたことがないような気がする。しかし、編集者として、彼女の才能をもう少し、自分の仕事にいかす努力をしないといけないと反省した。講座は、最近、徳間書店から出た『愛される男の自分革命』という本の内容に沿ったものだった。
日本に来て、25年になる。美人で軽いノリの彼女は、一見、タレントみたいに見えるけれど、実は大変なエリートなのだ。パリのENA(政治学院)という高級官僚や大統領を排出してきたグランゼコールの出身。フランスは階級社会だから、普通の人はこういう学校には行かない。家柄も知的レベルもきわめて高い少数の若者だけが行く学校だ。しかし、彼女はそう感じさせない、柔軟でフランクな女性だ。
ENAを出た後、日本に来て、三菱鉛筆でインターンシップを経験する。その時、大変なカルチャーショックを受け、多分、そのことが、彼女の作家としての出発点になったのだろう。三菱鉛筆で働いたとき、「日本の男って何でこんなに仕事ばかりしていられるのだろう」と思ったという。その後、慶応大学でフランス語を教えたりもしていたが、パリと東京を往ったり来たりしているうちに、あっという間に十数冊の本を日本で出版してしまった。いつの間にそんなに書いたのかなあ・・・・・・不思議でならないのだ。
その日の講座と本の中身は、簡単にいえば、日本の男性に「もてる男」になるためにはどうすればいいか、を伝授するというものだった。面白い話がいくつかきけた。フランス人がVACANCEを大切にすることは、よく知られているが、その語源はVACANT、つまり、空っぽにする、という語からきているのだという。「日本の男の人は、どうしてもっと空っぽにする時間をたいせつにしないの、なんでもっとリラックスしないの?」と彼女から言われると、今更ながら確かにそうだなあ・・・・と思えてくる。
フランスの男は、会社に仲間を持たないともいっていた。カフェで知り合い、そうとう仲良くなっても、何年も相手の会社の名前も知らなかった、なんていうこともよくあるらしい。フランス男は、「日曜大工」が好きだ、というのもあまり知られていない。暮らしを大切にし、なんでも自分で作ってしまうのだという。恋愛の仕方も、日本人の男と違うというが、そのことは、本を読んでくれという意味なのか、深い話はせず、逃げられてしまった。
そうそう、北野たけしが、レジョン・ド・ヌールをフランス政府からもらって話題になっているが、彼女も同じレジョン・ド・ヌールを昨年もらって、お祝いをした。たけしのほうが少し高位の勲章だったが。
