美しい。主人公を演ずる二人の役者も確かに美しいけれど、なによりも、愛し合う若い主人公たちの純粋な愛が美しい・・・・
親しくしている益田裕美子さんがプロデュースした新作『ソローキンの見た桜』の試写を見た。益田さんは我が社で出した『映画づくりはロマンとソロバン』の著者だが、今度の映画は、日露戦争のロシア人捕虜を収容していた四国松山を舞台に、日本人看護師とロシア人将校の愛を描いた日露合作プロジェクトである。
優れた「純愛もの」ほど強いものはない。昔から出版界でもそういわれてきたし、映画でも同じだろう。ベストセラー小説、ヒットした映画の多くは純愛ものだった。枚挙にいとまがない。悲しい別れで終わる物語であれば、なおのこと、人の心を強く揺さぶる。
主役の阿部純子を知らなかったが、初々しく、役柄にぴたりはまっていて、とてもいい。女優としての素質を感じさせる。銀行マンとの結婚話しがすすむなかで、ロシア人将校に惹かれてゆく主人公・ゆいの内面の葛藤が、見る者の心をきゅっと締めつける。ソローキン役の若いロシア人俳優もよかった。日本では知られていないが、ロシアでは若手の有望株という。
松山にあったというロシア兵の収容所がこんなに自由な雰囲気であったこと、一等国たらんとした明治政府は、「ハーグ条約」の精神を遵守して捕虜を人道的に扱ったこと、日本に送られてきたロシア人捕虜は7万人以上になり、収容所は日本全国に広がってその数が29にも及んだこと、などなどロシアとかかわる深い歴史を初めて知って驚いた。
史実の上に巧みに愛の物語を練り上げた井上雅貴監督の脚本が素晴らしい。気鋭の若手監督である。原案はあったらしいが、原作小説はなかったというから、井上監督の脚本が原作ともいえる。
革命の志を抱いていたソローキンとゆいは連れだって日本脱出を試み、一夜の契りを結ぶが、ゆいは彼を愛するがゆえに自ら身を引いて松山に帰り、二人は二度と会うことはなかった。しかし、ゆいはソローキンの子供をみごもっていた・・・・
見終わって、涙が出た。素直に、感動がこみあげてきた。試写室を出たところに益田さんがいた。「この作品は当たると思いますよ」。一言そう声をかけた。
公開は3月22日だという。
