雪ふる町に、燃える家。となりのとなりの家が燃えた。真夜中に外が騒がしくなったので、パジャマにコートを羽織って見に行った。雪が結構降っていて、炎に照らされてオレンジに見えた。夏の夕焼けみたいでとても綺麗だった。火事は、あっという間に物凄い火柱が上がり、炎が家を飲み込んで、雪で白い町を炎が真っ赤に染めていた。ほんとに全てが赤いのだけど、普通の赤とは何か違うのだ。生きた赤。炎に合わせて揺らめく色は圧倒的な生命力を持って、僕の心の奥を焦がした。燃える家の前ではパジャマ姿の家族が呆然と立ちつくしていた。絶望した様子もなく、ただ為すすべなく燃える我が家を見上げていた。しばらくすると、消防が水を撒き散らして火は収まった。ほとんど全勝で、銀行に勤めはじめた末娘が大きな声で泣いていた。
彼女が勤める地銀こそが僕の目指すべき場所だ。月末、銀行は取り扱い量が増え、そのぶん多くの現金が行内には用意される。狙うべきは月末。やるならでかく。だろ??
なんともない日曜日だった。いつもより少しだけ寝坊して、朝一番で洗濯をした。物干し竿で風にふかれる洗濯物は気持ち良さそうで、生まれ変わったら白いシャツになろうとか、いややっぱり洗濯機の中でぐるぐる回されるのは嫌だなとか、そういう他愛もないことを考えて、ゆっくりと時間が過ぎていっていた。
日曜日は銀行が休みだ。銀行が休みの日は僕も休む。対戦相手がいないところで頑張っても仕方がないからだ。本当は日曜日に銀行に忍び込むというのが、「バレずに盗む」上では最適なのだろうけど、忍び込むという行為は銀行強盗ではなく金庫破りのすることなので、仮にも銀行強盗未遂犯がすることではない。そもそも銀行が銀行として機能してない時に何かするのはフェアじゃない。やるなら一番難しいことをやらなくては。
だから日曜は休むのだ。洗濯機を回して、揺れるシャツに憧れながら。
銀行強盗をしよう
と僕は思う。
ただ捕まるのは嫌なので、非常に良く考える必要がある。捕まるというよりは、僕が犯人だと解ってしまうのが嫌だな。自分が銀行強盗犯だと世間様にバレた時点で負けだと思う。せっかく苦労して盗んだ金を自由に使えないとなれば、骨折り損に他ならない。
バレずに盗む。これが肝要。