月光と金閣寺、 | 美術家 村岡信明 

美術家 村岡信明 

漂漂として 漠として  遠い異国で過ごす 孤独な時の流れ
これを 私は旅漂と呼んでいる

 

村 岡  信 明 美術館

 

月光と金閣寺

 

金閣寺の姿に過ぎた日の記憶が蘇る。満月に映える金閣寺を見に幾度訪ねてきたことか。

この金閣寺が、ある夜、若い僧侶に放火されて全焼した。その放火に分別のなさに憤りを感じていたが、その後、僧侶の生い立ちと運命を知ってからは、私の中に感情移入して、紅蓮の炎に燃え上がる姿に共感さえ覚え、魂の運命の恐ろしさを感じていた。

「魂の運命」これは誰にでもある人間の心に潜む業(ごう)である。焼け落ちた金閣寺はもう戻らないが、新しく建て替えられた金閣寺にも月光は以前と同じようにさしている。

この月光に世の中の人間模様「魂の運命」が重なる。