平和なキエフの夜、 | 美術家 村岡信明 

美術家 村岡信明 

漂漂として 漠として  遠い異国で過ごす 孤独な時の流れ
これを 私は旅漂と呼んでいる

村 岡  信 明 美術館

 

平和なキエフの夜

 

キエフの街に民族料理店「ハタカラシャ」がある。夜、その店に入ると、すでに客が入っていた。店の奥にグループがいて、楽しそうにワインを飲みながら話し合っていた。飲む前にみんなでグラスを当てて「チンチン」と声を出していた。東京の下町では、男のあれを「チンチン」と言うので、茶目っ気 な私はグラスを持って彼らのテーブルに行き「チンチン」と言ってから、その日本語の意味を話すと、みんなは大笑い。彼らはキプロス人の観光客だった。すっかり仲良くなり、私の音頭で歌いだし、踊りだし、他の客も参加してきて、賑やかな楽しいキエフの夜となった。

 

毎日テレビや新聞はウクライナの悲惨な映像ばかり、戦争前のキエフの平和な日常を知る人は少ない。私は平和なウクライナを知っているので、キエフの日常を掲載した。この平和で楽しい日常が、突如、戦車の響き、ミサイルの爆撃で地獄の世界に変わった。この記事を書いている今も、ウクライナの子供たちは死んでいる。

 

2022年4月13日、水