上海の夜、 | 美術家 村岡信明 

美術家 村岡信明 

漂漂として 漠として  遠い異国で過ごす 孤独な時の流れ
これを 私は旅漂と呼んでいる

上海の夜、

~~~~ 王さんいま何処にいる、~~~~

 

長い江蘇省・儀征の旅を終えて帰国するとき、許さん家族は上海まで見送りに来てくれた。泊まったホテルの経営者は許さんの親戚で、ホテルに収蔵している大きな古代壺や陶器などさまざまな美術品を見せてくれた。

その日は一日上海観光、上海では「三日見なければ田舎者」と言われるほど上海は目まぐるしく変わっている。町は活気というより、猛烈な勢いで変貌している。

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夜は許さんの家族・親戚、王さん家族も集まって、盛大なお別れパーテイを開いてくれた。蘇州(そしゅう)、儀征(ぎせい)、痩西湖(そうせいこ)、中山陵(ちゅうさんりょう)、南京など、皆と巡り歩いた日々が重なった。テーブルに出てくる料理は日本では見ることも出来ない珍しい料理もたくさん出てきた。利さんは隣に座って、みんなの話を通訳するのに忙しく、ゆっくり食べる暇はなかった、利さん有難う!

食後、散歩がてらに海岸通りに出ると、上海を象徴する超高層ビル群が並び、上層階には雲がかかっていた。

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日本に帰ってから、ある日、王さんから電話が入った。

「移動で〇〇〇へ行くことになりました」と、

〇〇〇といえばアフリカか中南米の小さな国名で聞いたことがある。が、中国にも同じ名前の都市があるのだろう、と気にも留めないで、いつものように話してから「じゃ、お元気で」と電話を切った。

まさかこれが王さんとの長い別れになるとは、

王さんはよく手紙で近作の絵の写真を送ってくれた。また中国画の未来など持論の論文なども送ってくれた。が、あの電話を最後に王さんからはなにも来ない。

自宅に何度も手紙をだしたが返事は来ない。あの遠い国〇〇〇へ出向して行ったのだろうか、

中国は国家政策として中国文化を世界の国々に広めるために、優れた芸術家を海外に派遣しているが、王さんもその一人として派遣されたのだろうか、

                   

王さん、いま何処にいる。早く帰って来いよ!

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2018829、(水)村 岡 信 明