東京大空襲、奪われたすべてを返してください、 | 美術家 村岡信明 

美術家 村岡信明 

漂漂として 漠として  遠い異国で過ごす 孤独な時の流れ
これを 私は旅漂と呼んでいる

東京大襲を語りつぐ。10

奪われたすべてを返せ

 

奪われた すべてを返せ

私が この子が 何をしたというのですか

小さな幸せを守って ささやかに生きてきたのに

なぜ殺されねば ならないのですか

返して下さい 奪われたすべてを

 

お姉ちゃんは泣かないよ

みんな燃えちゃった

家もない、/ 食べる物も無い

幸せもない / 明日も無い

でも、ここから生きるんだ

 

悲しみは子供の胸に

空襲で家族がみんな死んじゃった(とおる)

毎日ひとりで 焼け跡を掘っていた

小さなカケラにも 父と母と兄妹の思い出が

いつも 唇を噛みしめて 黙々と

 

一人だけ生き残った()()ちゃん

冷たい風に吹かれて 来る日も来る日も立っていた

「毎日正午/ここで待つ 美智子」焼け跡の立札

今日も誰も帰らない みんな死んじゃったんだ

涙をためて ひとりだけ生き残った美智ちゃん

 

 

2018310()、死との記憶、詩と絵、村 岡 信 明

1945310日、午前0時~2時頃まで、アメリカ軍の空襲で10万人以上が焼き殺された。