東京大空襲、地獄の夜が明けた、 | 美術家 村岡信明 

美術家 村岡信明 

漂漂として 漠として  遠い異国で過ごす 孤独な時の流れ
これを 私は旅漂と呼んでいる

東京大襲を語りつぐ。08、 

地獄の夜が明けた

太陽も泣いている

灰燼と化した東京の空が白む

生きながら殺された 人間の死臭に満ちて

十万人を焼き尽くした煙が重くただよう

血の色で昇る太陽 母がポツリと言った

ほら、太陽も泣いている

 

私の子供を知りませんか

一緒にいたんです 手を握り合って

崩れてきた炎が 二人を引き裂いたんです

燃える子供の泣き声が まだ聞こえます

私の子供を知りませんか

 

死体の下を川が流れていた

炎に映る川波は 死神の唾液

夜が明けると川面は見えず

死体が重なり合って揺れていた

子供を背負った母親も揺れていた

 

目をつぶされた老人が歩いてくる

ほら、見てごらん 誰かを呼んでいる

すさりながら 空をまさぐる老人

潰された目にうつる漆黒の人生 

どこへ行く 死体の横に静かに座る

 

 

201838()、死との記憶、詩と絵、村 岡 信 明

1945310日、午前0時~2時頃まで、アメリカ軍の空襲で10万人以上が焼き殺された。