円空破れ笠、5、深山の奇なる出会い、1
深山の奇なる出会い、
~~~~~~ 木曽御嶽の深い森をゆく。、~~~~~~
太陽の照り具合と雲の流れで天気を見定めてから,重いザックを背負って、次のベースキャンプを求めて中州を発った。
木曽御嶽の山中はうっそうとして陽もほとんど通さない。薄暗い茂みや木々の葉はいつも濡れている。森の中は香りのする新鮮な酸素がふきだしていた。
山の空気を胸一杯に吸い込んで歩く心地よさ。時折、ギーッ!と山鳥の啼き声
が聞こえるが、またもとの静けさにもどる。
Ψ
たしかな山道を歩いていても、道はだんだん細くなり、やがて落ち葉の重なる腐葉土の柔らかい道となり、木樵道に変っていく。
どこに行くとも当てのない山行はあせることもなく、そこが御嶽山中であれば何処でもよかった。
ザックの中には地図も磁石も入っていた。が、東京ではよく見ていたが山中に入ってからはめったに使うことはなかった。
感、自分の感を使って未知の中洲を見つけることも単独行の楽しみであった。
半日ほど歩くと、巾の広い中州が見つかった。山道を降りて行き、瀬を渡って中州につくと、すぐにテントを張ってから、川岸の太い木の幹にザイルを結びつけ、その先端をテントの中に持ち込んで固定する。そうして雨と夜に備えた。
Ψ
山の落日は早く、鳥が塒(ねぐら)を迷うことさえある。
陽が西の稜線に沈むと息詰るような闇が襲ってくる。渓谷も山々も闇に包まれて何も見えなくなる。
テントの中は汗臭い体臭がただよう。食事をつくるのがおっくうになり、干魚をかじりながらランプもつけないで、そのまま横になっていた。
深山の夜は渓流の音だけが聞こえてくる。
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2016・12・12、(月) 人間円空の物語、
phot, MURAOKA nobuaki, 撮影・村 岡 信 明、