幾春別・小樽で詠む | 美術家 村岡信明 

美術家 村岡信明 

漂漂として 漠として  遠い異国で過ごす 孤独な時の流れ
これを 私は旅漂と呼んでいる



北海道の旅漂 5

幾春別・小樽で詠む

こぼれ降る雪に消えゆく廃坑の櫓さむざむと 盛衰のまぼろしすれ違う 月凍る町幾峻別


雪原ひきずりてオリオン星座海に落つ 空を裂く犬の遠吠え しじまに更ける幾春別


円空沙門の影を追い 雪深き山里の旅籠に泊まる 月寒天に煌々と 迷い舞う風花窓を打つ


尼僧に募る見たことの無き母の影 幾峻別いずこ星座の果てに涙する みなしごの三絃草原の歌

             

              Φ

ロシア語のサイン目につく波止場の小店 雪まざりの汽笛朝にふるえ 海猫の群れ飛びかう小樽の港

              

アイヌウラ 漂着の異邦人 知る人も無き小樽の街で ロシア語の太いひびきに振り向けば坂道の果てに碧き海あり