7月5日より、智美術館の「走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代」後期展示が
始まりました。
出品数が多いので、後期のなかでも展示替えがあります。
(詳細は本ブログ末尾に。)
1948年、終戦からわずか3年後に創設された”走泥社”は、以下の年表のとおり
多くの同人を生み、長年にわたりムーブメントを作ってきました。
後期展示は、1964 年開催の「現代国際陶芸展」で海外の陶芸表現を目の当たりにした後の
発展期をカバーしています。
走泥社の幅広い活動を網羅する本展は、京都国立近代美術館から以下の通り巡回。
締めくくりの東京展が智美術館にて開催というのはちょっとしたサプライズでした。
というのも京都近美などに比べると、個人が創設した智美術館は比較的こじんまり
した施設。
京都、岐阜、岡山を代表する美術館と肩を並べるとは。
とはいえ陶芸活動を専門に支えてきた智美術館こそ、
本展開催にふさわしくも思えます。
巡回
京都国立近代美術館 2023年7月19日(水)~9月24日(日)
岐阜県美術館 2023年12月19日(火)~2024年2月18日(日)
岡山県立美術館 2024年2月27日(火)~4月7日(日)
菊池寛実記念 智美術館 2024年4月20日(土)~9月1日(日)
一部作品を除き(現時点の展示では1点のみ)、写真撮影可能。
1948年の当初メンバーが冒頭の5人というのがこの年表からわかります。1950年、51年、、
と同人が増えていく一方、短期間で離脱する人も。
一方で、鈴木治さんと山田光さんは、草創期から解散年1998年まで所属していた、
というのも感慨深く。
陶芸=器という規定概念を徐々に壊し、斬新なオブジェが生まれていく、
その過程の強いエネルギーが充満した展示会場。
下の作品などは、紙飛行機とか焼き網など、紙やメタリックなものまで
陶芸で表現しています。
頭から窯に突っ込んでいる紙飛行機もあり、飛びたいけど撃沈、、そしてくすぶっている?
なにかぐつぐつした、胸中の思いが吐き出されている。。
まさに実用的に使う器から完全に離れて心象風景が広がっています。
緑川宏樹『くすぶる 紙飛行機』
絵画でも、写実から象徴主義や抽象主義が出たのと同じこと。
既定路線からどんどん波状的に広がっていくチャレンジ精神全開です。
林秀行 『作品』 男女
文学にたとえるとエミール・ゾラのごとき、社会派の作品も。
里中英人 『シリーズ・公害アレルギーI-IV』
抽象派といってもいいかな。
波らしくないフォルムから波を想像させる技。
馬という鈴木治さんの作品も同様です。
金ヶ江和隆 『波打つ形 青』
辻勘之 『虫』
平置きせずに細い支持体で浮かせて展示するこの手法で浮遊感が出て
この起立した一頁に味を加えている気がします。
八木一夫 『頁1』
こうして集団で活動することに加え、海外の全く異なる視点の作品を目にしたことで、
陶芸の在り方が根底から覆された・・
どんどん殻を破って前衛運動が加速していったんだろうなぁ。
今回、陶芸の多様性を一気に見ることで、そんな大きなうねりを感じます。
この時代の人たちは、陶芸の可能性に心躍らせて、次々に新機軸を打ち立てていったのだろうなぁ。
やり尽くされていないから、閉塞感もなく、自由にのびのびした気風と野心を
めいっぱい感じました。
智美術館展覧会概要:
「走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代」
前期:2024年4月20日(土)~6月23日(日)
後期:2024年7月5日(金)~9月1日(日)
前期、後期の各期内にも展示替えあり
休館日:毎週月曜日(ただし4月29日、5月6日、7月15日、8月12日は開館)、4月30日(火)、5月7日(火)、7月16日(火)、8月13日(火)、展示替え期間
展示替えに伴う休館期間(各期内にも展示替えあり):
5月27日(月)~5月30日(木)
6月24日(月)~7月4日(木)
7月29日(月)~8月1日(木)
開館時間:11:00~18:00 ※入館は17:30まで
観覧料
通常券 一般1,100円/大学生800円/小中高生500円
2回券 一般1,700円/大学生1,300円/小・中・高生700円