既に会期終了しましたが、昨年「源氏物語 よみがえった女房装束の美」展(~12/28)を

丸紅ギャラリーで見てきました。

 

目玉のひとつは、源氏物語の明石の君の装束の再現。

当該時代の具体的な装束は現代に伝わっていないそうで、実践女子大学の研究チームが

時代考証考証を重ねて実現したもの。

源氏物語絵巻に描かれた装束は、物語執筆時から100年以上の時を隔てており、

厳密なものとは言えないのです。

 

展示室では人が着用しているかのように立体的に展示されていました。

なんといっても布地の柔らかな風合いと、自然素材ならではの

優しい染色に目を奪われます。

 

期間限定の展示の場のために創作されたというより、

源氏物語の時代の装束研究全般に資するものという位置づけなので、かなりの注目度。

 

着装デモンストレーションを含む講演会は満員でした。


下の写真は、デモンストレーションの後の撮影タイムにて。

ただしこちらは縫製・染色上、現代の装束を用いての実演。

明石の君の再現装束は撮影禁止の展示室でのみ見られました。

 

 

 

まずは丹念に1枚ずつ時間をかけて着装が行われました。

その際、紐は使うものの、何本もの紐で結んでいくのではなく、

1本のみ用いて、都度抜いているように見えました。

だからこそ、脱衣は一瞬。

時間をかけて着つけられたものが、一瞬でハラハラハラっと空蝉の状態になっていく様子は

あっぱれでした。

 


 

 

明石の君の装束再現展示では、中央にすべての衣をまとった着装時の再現だけでなく、

ひとつずつの布地の展示もありました。

 

そのほかの展示は以下:

 

萌黄の小袿(こうちき)
・『源氏物語』の本文にある「萌黄あらやむ(萌黄色の小袿だろうか)」を典拠に制作。

 模様は『源氏物語絵巻』「橋姫」などに見られる模様を採用。

 

装束の1番上に着用する唐衣
・模様は『紫式部日記絵巻』の藤原道長の妻・源倫子の唐衣の文様を参考に。

 

 

 

こちらが展示風景に近いもの。

この写真から人を抜いたかたちで展示。

 

 

以下は次回展示です。

源氏物語が昨年で終了し、続けて1月23日から「小袖裂と復元小袖」展が続けて行われます。

 

 

 

この竹のしつらえは、丸紅相互会、草月流、華道部共同制作。

 

 

 

本展に至るまでの源氏物語装束研究は5年の月日をかけたとのことです。

NHK大河ドラマ「光る君」の制作発表前のことなので、大河ドラマとの

コラボ展示というわけではなさそう。

もしコラボ効果を狙うのなら、小袖展を先にして、源氏物語展を1月にぶつけそうですし。

 

会場を埋め尽くす人々も、大河ドラマへの興味というより、

純粋な着物ファン、源氏物語ファンがメインの様子。

 

 

2017年出光美術館の「開館50周年記念岩佐又兵衛と源氏絵 ―〈古典〉への挑戦」展では

様々な絵師による華麗な源氏物語の世界を堪能。

図録を読みながら、「源氏物語」を最初からきちんと読まないとなぁと思ったものの、挫折。

 

今年はいい機会なので再挑戦です。とりあえず現代訳付き古文で。

「桐壺」あたりは読めば思い出すけど、さていつまで続くやら。

 

池澤夏樹さん編集「日本文学全集」のなかに角田光代さん著の「源氏物語」があるけれど、

角田さんは、もしかして与謝野晶子訳などを読んで執筆されたのでは?

講演会でお話を聞いて、なんとなくそんな印象を受けました。

ちょっと怖いもの見たさで目を通してみたいけど、

訳がこなれすぎていると興ざめだし(いわゆる「いとすさまじきもの」ってやつ)

現代訳ファーストは反則かな。