日経新聞朝刊の「私の履歴書」、今月は杉本博司さんでした。

 

いまや国際的アーティストとしてゆるぎない地位を得ていますが、知名度の割に過去の経歴は意外に謎のベールに包まれていました。

それもそのはず、立教大学経済学部を卒業した後すぐに渡米したのですから。

 

独特の切り口・感性で生み出された作品がメトロポリタン美術館に収蔵されるなど、異国の地で幸先のいいスタートを切った杉本さん。

 

現地で数々の奨学金を得て、米国で評価され、賞を獲ったいきさつ、美術品収集の話、交友関係などが1ヵ月に渡り綴られてきましたが、とにかく知らないことだらけです。

 

 

1970年という時代を考えると、日本人が国際舞台でのし上がるのはたやすいことではなかったはず。

でも記事を読む限り、スルリするりと世渡りをしていった印象です。

 

なかなかの知恵者で世の中を読み取る鋭い目を持っていることも十分伝わってきました。

 

さらに、「戦後」というものへの意識の濃さも。

ちなみに杉本さんは、1948年生まれです。

 

現代アーティストとして意表を突くかたちで生まれた斬新な作品の裏に、第二次世界大戦という”古い”出来事への執着があることが意外で、その相反するような思考がどう作品の中に統合されているのか、あるいは住みわけされているのか、まだ私の頭の中では整理しきれていません。

 

その過去の戦争への思いを並々ならぬ熱量で語っている部分が何か所かあります。

「私の履歴書」を読んだ方たちの多くが、意外な思いをしたのでは?

 

 

ちなみに私が初めて生で杉本博司さんを拝見したのは、東京都庭園美術館のリニューアルオープンのとき。

友人がたまたま関係者で、くっついていったのですが、杉本さんがいらしたのはほかでもない、リニューアルの時に付け加わった新館(↓)のアドバイザーを務めていたからです。

 

 

 

なかでも杉本さんのお勧めは、旧館と新館をつなぐ渡り廊下の変則的なガラス。

光の乱反射の妙を楽しんでほしいとのこと。

 

 

 

このガラス越しに見た外の風景です。

 

 

 

ベルニサージュもこの新館で行われました。

 

 

 

 

フィンガーフードのカバーには、アールデコの模様。

 

 

 

お土産はラリックのガラス細工に浮かび上がる乙女がかたどられたチョコレートでした。

 

 

 

これですね↓ ラリックの乙女。

 

 

 

杉本さんの作品は、日本で一度にあまり多くを目にする機会はありませんが、東京国立近代美術館の「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより」展には、《最後の晩餐》が出展されていました。

 

実はこの「現代美術のハードコア・・」展の内覧会・ベルニサージュにも参加させていただきました。

 

驚くことに、このときは、内覧会参加者を美術館が普通に募集していて、申し込みもなしに当日行くだけで参加できたという不思議。

募集告知はニュースレターだけだったせいか一般参加者は20人ぐらいだったかと。

 

2014年のことなので、まだブロガー内覧会がそれほど一般的ではなかった時代だったのかも。

 

 

 

同展の目玉のひとつ。マーク・クインの野外展示。

 

 

 

毎日欠かさず読んできた「私の履歴書」杉本博司さんシリーズも、いよいよ明日が最終回。

ちょっと寂しいです。

来月はどなたでしょう?