未知の作家の本を手に取る、、、

そのキッカケは、新聞やSNSなどで書評や感想を読み興味をそそられて、というパターンが多いけど、

 

・たまに友人のお勧めだったり(須賀敦子さんがそうだった)、

 

・タイトルに引かれてなんとなく(「The Door into Summer」=「夏への扉」原文タイトルも、邦訳タイトルもともにいい)、

 

・英語のペーパーバックの場合、表紙の絵や作者の写真に引かれてというのが結構ある(「Eric」や「Cider House Rules」がそれに該当)

 

 

でもこの本はちょっと経緯が異なり、公開動画で作者自身の言葉を聞いて手に取ったものでした。

本の内容について触れているわけではないものの、話し方が爽やかだったので。

 

 

作家の名前はLætitia Colombaniレティシア・コロンバニ。

書名は「La Tresse」。

和訳のタイトルはオリジナルのタイトルそのままに「三つ編み」。

 

 

コロンバニは女優でもあり、オドレイ・トトゥ主演の映画「愛してる、愛してない...」などの監督としても活躍。そして作家としても成功を収めている、というマルチなタレントの持ち主です。

 

 

ここ最近では先日の「Les Délices de Tokyo」(ドリアン助川さんの「あん」の仏訳版)に続き、2冊目のフランス語で読む現代文学作品です。

 

プルーストやスタンダールなどの古典ばかりでは疲れるので、現代作品でちょっと箸休めをしたくなりました。

コンテンポラリーのものは、古典に比べて数段平易なので。

 

 

あらすじなど一切知らず、事前情報をシャットアウトして読んだので、現実を投影している最初のページが特に衝撃的でした。

 

フランスの作品にしてはメッセージは比較的シンプルで、女性の境遇をストレートに訴えかけるもの。

映画を撮るときの姿勢も同様なのだろうなと思わせます。

実際、本人もフェミニストを公言しているようです。

 

 

全体の感想としては、とにかくプロットをしっかり練っていて、タイトルも絶妙です。

何かのきっかけでひらめいたのかもしれませんが、着眼点に唸りました。

ストーリーテラーとはこういう人のことを呼ぶのでしょうね。

3つのポイントがどうまとめあげられるのか最初は見当もつかず、読むに従いその謎に近づいていく喜びを感じました。

 

特にインドの現状システムに関する記述はとても重く、それを堀り起こすにあたっては相当調べたことでしょう。

フェミニストとしてのレティシアの熱意が感じられます。

 

一方で、人物像をじっくり掘り下げるということはなく、背景も綿密に描きこむスタイルではなく、さらりと読める作品です。

でもそれだからこそ、重いテーマに引きずられすぎずに済んでいるのかもしれません。

 

 

フランス語で読んでもかなり読みやすいので、ネイティブにとってはやや物足りないのでは?と疑いましたが、現地での書評は総じて芳しいようです。

 

 

内容を知らずに読むのがおすすめなので、あまり詳しく書くのは控えます。

 

代わりにアマゾンで「La Tresse」の読者レビューを読んでいると、上記の私の感じ方にかなり近いものがいくつかありましたので引用を。

 

 

たとえばー 

●繊細、知的、感受性豊か。冒頭ページは、私が全く知らない世界を発見させてくれた。

Délicat, intelligent, sensible. Les premières pages m'ont fait découvrir un univers que j'ignorais totalement ・・・

 

 

●フランス語がネイティブでない者にとっては読みやすい。最後はすべてがうまく行って、ハリウッド映画みたいだが、でも良書である。

Very good book for a non-native French person. In the end all goes well like in a Hollywood movie but that's nice.

 

 

●ドラマティックすぎて、キャラクターに深みを持たせていない。読んだ感じは小説というより、脚本のよう。

It was overly dramatic and the characters did not have much depth. It read more like a screenplay than like a novel.

 

 

映画化して自らメガホンを取る、そんな青写真も本人の頭の中にはあるのではないかしら?

 

 

 

 

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本書に登場する3つの場所には残念ながら行ったことがありません。

関連の写真を見つけたいところでしたが。

 

それらとは無関係の異国に関係するものを先日散歩中に見つけたのでその写真を。

 

目黒にあるアレクサンドル・ネフスキー聖堂です。

ロシア正教の教会とのことです。

ロシア正教といえば有名なのはニコライ堂でしょう。

あちらは辰野金吾の師でもあるジョサイア・コンドルの設計でも知られていますね。