小池百合子都知事の自粛要請を受けて、美術館はしばらく行かないつもりなのですが、

今週実はひとつ展覧会に行きました。

 

Bunkamuraミュージアムで開催中の「超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵」展です。

 

ただ、特殊な条件で行われたから行くことができた、というのが正直なところ。

 

・開催は美術館閉館後の19時から開始し、参加画家の島村信之さんのレクチャー付き、

・限定20名だけ、

・入り口は開放式で、アナトリウムのようなスペースで多少は外気が入ってくる、

といった条件です。

 

 

本展は、去年10月25日の豪雨被害でリニューアルを余儀なくされているホキ美術館からの

借用作品で構成されています。

ホキ美術館、といえば、まるで写真のような超絶技巧とも呼べるような精密な筆致で描かれた絵画の数々を所蔵することで有名です。

 

「超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵」展には森本草介氏の作品を筆頭に、現代の代表的写実派画家さんたちの作品がずらりそろいました。

 

*本展今回のコロナ騒動で、開幕が2日遅れになったうえに、今週末は臨時休館なのでご注意を。

 

 

ホキ美術館の売れっ子No.1である島村信之さんのレクチャーは、氏の画歴を中心に展開。

マットでさわやかな女性の肖像が印象的な画家さんですが、

同時に昆虫標本やロブスターの絵などインパクトのあるものも並行して描かれています。

 

後者の絵、つまり標本系の絵は、趣味で夢中になっているものなのだとか。

女性像ばかり描くなかに、たまに趣味を描くことで息抜きができるそう。

息抜き、といってもあくまで精密画で、本物と見まごうばかりのつややかさ。

 

クワガタの収集などは、プロ並みというべきか、相当な凝り性ぶり。

単位捕獲してピンでとめるといった単純なものではないことがよくわかりました。

生息地、種類など知識は必須。標本にする際にかなりの技巧が必要のようです。

 

島村さんはもともとスポーツマンで体育系の学校への進学を目指そうとしたところ、美術の先生に気に入られて方向転換をした、という異色の経歴をお持ちです。

 

 

本展にはホキ美術館で見た絵がもちろん多数あるので、懐かしく拝見。

リアリズム絵画はなんといってもすっと絵に入っていけるのが特色でしょう。

 

 

今回の展示会が中人気の一枚がこちら。

生島 浩さんの《5:55》です。

素人のモデルさんなので門限があり、6時までしか引き止められないとのこと。

そんなか、時計の針が5時55分を指し、モデルさんの帰りたいオーラ全開の一瞬が

横から差し込む西日の中に淡く浮き立っています。

 

色合いも落ち着いて、まるでセピア色の写真を見た時のような

得体のしれない郷愁を誘います。

 

こちらは館外のフォトスポット。

 

 

 

下は会場内のフォトスポット。

小曽木誠さんの《森へ還る》です。

 

壮大な自然の前に若いギャルたちも無力になる、

そんな瞬間を収めたもの、とのこと。

この絵は初めて見ました。

ロマンチシズムをあわせもち、扇状の広がりなど図形的にも面白い作品。

 

モデルさんの配置がやや化粧品ポスターのように配置されていて整いすぎている印象も受けますけれど、さわやかな森の空気を感じます。

 

 

 

ところで美術館によるコロナ対策の感想ですが、このご時世にレクチャーまで開催するぐらいなのでかなり万全な対応がされているだろうと推測していました。

数週間前に行ったスポーツジムでも、換気、消毒液など万全の体制でしたし。

 

ただ、行ってちょっと意外だったのは、コロナに関する注意喚起も説明(換気に配慮しているとか、どういう対策がとられているかなど)も一切なく、入館時の質問もありません。

 

さらにレクチャーの椅子の配置も、前後の距離が1mに満たず、やや心配になったことは確かです。

 

細部に注意を払って開催されたのかどうか、いまひとつわかりません。

実際HPにも、どの程度配慮して開催しているかなど、情報は皆無。

 

印象としては、おしゃべりをしないからリスクは低いだろう、程度の認識だったのでは?と思いました。

でも、入り口は空いていてもやはり換気が不十分なのは否めず、1時間半もの間レクチャーを開催するにしては、対策は心もとなかったと言わざるを得ません。

 

ただ今回の都知事の言葉を受け、さすがに次回の閉館後鑑賞会は中止になったようです。

今現在、今週末2日のみの休館で、来週の30日からはリスタートの予定です。

(Bunkamuraは月曜休館ではないので。)

 

 

その点、感染状況を見ながら、いち早く3月の展示を完全に打ち切り、その後4月初旬からの展覧会開幕を早々にサスペンドした出光美術館などは、感染症への認識がかなり高いという印象です。

 

3月末の開館については見合わせる美術館が多いものも、いつまで見合わせるのか状況を見ながらとして決定していないものが多いのに、出光は、3月23日の段階で早々に1か月後の4月21日(予定)まで開催を見合わせる旨発表しました。

 

厳しい決断だったと思いますが、やはり大手企業としての責任感を強く感じさせます。

 

 

逆に、自粛が叫ばれるなか今週末の開館を強行するのがアーティゾン美術館。

事前予約制にしてしまったため、キャンセルなどが伴うため続行を決めたのかもしれませんが、この事態を重く受け止めていないかのようで残念です。

 

アーティゾンは予約制、とはいっても初日のオープニング日ですらどの時間帯も定員にいきませんでした。

これまで定員到達は一度もなく、予約はまったく不要だと感じます。

7月の企画モネ展だけを予約制にすればよかったのに、と。

 

しかも、予約制だからコロナ騒ぎでも込み合いませんよ、とこれを売りにし始めたのはなんだかなぁという印象です。予約があってもなくても込んでいない=これまで定員に到達していないのに。

 

主催者側のモラルの違いが際立ちます。