今日は建築家・藤本壮介さんの講演会でした。

 

藤本さんは、先日述べた東京国立近代美術館・窓展の庭にある窓だらけの家を設計した方ですが、この方実は、私が長年お世話になっている日仏学院(現・アンスティチュートフランセ)の新校舎と改築を手掛けることになりました。

 

そこで日仏学院のコンセプトにつき、ご本人じきじきに説明などがあったのです。

 

まず本題に入る前に藤本さんの過去の作品例のお話が続きます。

最近の事例で言うと、フランス・モンペリエのコンペの集合住宅コンペを勝ち取り、それが完成したとのこと。

入居開始はもうまもなく。

 

その集合住宅というのがまったくもって斬新で、モンペリエの町のランドマークとしてすでに注目を集めています。

 

 

 

四方八方にせり出す白い長方形がユニークなこの建物。

せり出し部分はバルコニー。

 

近隣との距離感が近いのは、藤本さんが考える独立とコミュニティの融合を具現化したものなのだとか。

 

 

 

 

下の写真を見ると、手前のバルコニーから階段をつたって一つ上のバルコニーに行けてしまうようで、他人の家に直通で行けちゃうの?と一瞬驚きますが、そうではなく、階段でつながっている2つのバルコニーは1つの世帯が所有します。

 

つまり、集合住宅の中でメゾネットが実現しているわけです。

 

なんとも解放感たっぷりですが、藤本さんの建築物すべてに共通して言えること。

 

 

 

もうひとつ、今回の講演会で発見した驚愕の事実は、先日見た東京国立近代美術館の庭に今置かれている藤本壮介さんのモデルハウスが、実は単に展示用ではなく、実際に個人邸宅として建てたものとほぼ同じスケールで、多少変更してはいるものの、同じスタイルで再現したものなのだとか。

 

つまりこれ(先日の写真を再掲)に住んでいる方がいるんです。

 

実際の家も屋内に木々が配置され、窓がいたるところにあります。

「内と外の境界を曖昧にしている」という発言がありました。

 

先日ブログで私はこんなふうに綴っていました:

「このインスタレーション、この窓越しの通気性により、内と外との往還を感じるのですが、自分が中に入ったり出たりすることで、その内外の境目がいっそう曖昧になる感覚が生まれます。」

 

このインプレッションは、どうやら作者の意図であったようです。

 

 

 

 

 

今回スライドで見た建築例も、なんとも風通しが良く、さらに複雑な組み合わせにより、角度に寄り様々な形に変化していきます。

 

先日窓展で藤本建築について書いた「見るアングルによって表情が大胆に変わります」というスタイルが様々な建物についても言えるようです。

 


 

 

さて、講演会の終盤、新しい日仏学院の構想が話されました。

長年親しんだ敷地も、スケッチを見る限り、がらりと変わる予定。

 

旧本館は取り壊しせずに改修。

別途新しい建物が建てられます。

 

古いものと新しいものが融合しますが、新しい部分は現在の建物(設計はル・コルビュジエの弟子坂倉準三氏)に寄り添うのではなく、流れを汲みつつ新機軸を打ち出すとのこと。

 

レストランの上が屋上になり、そこから教室にもつながるようで、

空間の行き来がやはり多用されることも示されました。

 

マイクを持っているのが藤本さん。

モデレーターは雑誌「カーサ・ブルータス」の編集長さん。

 

 

 

 

もともとある緑を重視するというのも、北海道生まれで自然との融合を常に考えている藤本さんらしい発想。

すでに工事はスタートしています。

 

建築家の派閥には属さず、ル・コルビュジエに私淑したかたち(故人の思想を再構築、再解釈、反論しつつ作品を築いていった)で仕事を続けてきた藤本さん。

 

フランスにも支店があり、10件のプロジェクトが現地で同時進行中、というから驚きです。

 

国内でも個人宅を多く手がけてきましたが、公共案件としては武蔵野美術大学の図書館などが代表作。

螺旋型で、コンセプトは「プロムナード」。

そぞろ歩きしながら本を手に取るようなイメージです。

 

今後の展開がますます楽しみな建築家さんです。

 

 

 

 

ユニークだった「窓展」 東京国立近代美術館