◆個人的に機内でドラマチックな出会いも
アートファンには見逃せないコラムが日経新聞で脈々と続いています。
「十選」というタイトル自体はやや素っ気ないのですが、
10回ごとで区切られるコラムでそれが時には「接吻十選」になったり、
「21世紀の美術建築十選」になったり
筆者次第で多様なタイトルを得て、様々な展開をみせていきます。
毎回10回ずつ執筆を担当するのは主に学芸員さんや美術評論家ですが、
音楽がらみの視点や科学技術的な視点から絵を読み解く場合は
それぞれの専門家であることも多々。
例えば音楽評論家・林田直樹さんは、音楽と響き合う絵画(2018年08月27日のブログに掲載しました)というタイトルで、10枚の絵を選び、語っています。
最新シリーズのタイトルは、「終末の輝き十選」。
筆者は三菱一号館美術館館長高橋明也さんです。
画家が命尽きる直前に描いた絵について語るこのシリーズ、
取り上げられたのは、現在7回目が終わって必然的に長寿の画家がメイン。
最晩年まで精力的に描いた北斎、大観、ピカソなど。
或いはゴッホのように早世であっても死を意識して生きていた画家も入っています。
終末、、、と聞いてふと浮かんだのが、最近プラド美術館展で見たルーベンスの「アンドロメダを救うペルセウス」。
彼の絶筆作で、弟子のヨルダーンスが加筆して仕上げました。
ただ最後までひとりでしあげたわけでないので、輝きの範疇には入らないかな。
でも、ルーベンスとヨルダーンス、両者の筆のタッチの見分けはつかないし、
晩年の作なのに、筆の衰えもなく流麗で、
お色気アンドロメダの「待ってましたペルセウス!」みたいなにんまりした表情も絶妙。
あれこれストーリー性がある1枚です。
さてあと3回、どんな画家のどの絵が含まれるでしょう。
筆者の高橋館長は印象派が専門なので、ルノワールあたりを持ってくるかなぁ。
明日も寝間着姿でPCを立ち上げ、日経電子版のお気に入りまとめ読みの頁に飛んで、好奇の目でPC画面を見つめる私の姿がきっとあるはず。
ちなみに高橋館長、なかなかあざといです。
上の「終末の輝き」の2番目はシャガールが取り上げられているのですが、
本作の所蔵者は吉野石膏。
そう、現在三菱一号館美術館では吉野石膏コレクション展が開催中。
何気に宣伝を滑り込ませているのを私は見逃しませんでしたよ。
ちなみにこの山(↓)は平成21年の「十選」切り抜きなのですが
一番上の記事には多大な思い出があります。
実は私、平成21年、飛行機の機内でドラマチックな出会いを果たしました。
その時私はエールフランスでパリ・ヴェネチア経由パドヴァに向かう途中。
日経新聞を機内でチョイス。
広げて読んでいたら、この記事に目が留まりました。
画像はパドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂にあるジョットの壁画の一部です。
ユダがキリストに接吻するシーン。
これを合図に、キリストは拿捕されるという緊張の場面ですが、
キリストは半ばそれを悟ったような諦観と慈愛に満ちた微妙な表情をしています。
何を隠そう、この絵に会いたくて、スクロヴェーニ礼拝堂に行く計画だった私。
そんな私の目の前にジョットが突如降臨したのですから、唖然・愕然・驚愕。
切り抜いて旅の道中携帯しました。
いまでは膨大な切り抜きコレクションの中の1つに収まっています。
こんなふうにぐちゃぐちゃ切り取らないで電子版の画像を保存すればいい話ではありますが、画像保存という冷徹な作業より、このアナログな作業の方が美の追求の作業としては、どこかぴったりくるんです。