東京文化財ウィーク2019のこの時期は、普段非公開の文化財が特別に公開されるので、毎年楽しみにしています。

 

本日行ったのは、白金近辺にある明治学院キャンパス内のインブリー館(下の写真)。
都内で最も古い歴史を持つ宣教師館で、国の重要文化財です。

 

以前講演会で本キャンパスに足を踏み入れ、愛らしい建造物の数々に目を瞠りました。

宣教師館もさることながら、後述のチャペルは、かのヴォーリズ(明治末から昭和にかけて西洋建築を次々手掛けたアメリカ人建築家)の設計です。

 

さらにキャンパス全体も緊密な計算された構成で作られているのですがその話はまた後日。

 

 

 

 

そもそも明治学院が創立したのは1863年=文久3年のこと。

24年後に白金の地に移転。

 

歴史の長い学校だなぁという印象ですが、ヘボン式ローマ字で知られるヘボン博士が開いたヘボン塾がその起源です。

 

以前ヘボン博士の足跡をたどるツアーに申し込んだことがあります。

結局都合が悪くなって行けませんでしたが、その時にヘボン博士=明治学院という図式を初めて知りました。

 

 

1989年には神学部教授のW・インブリー博士が住む館としてこのインブリー館(設計者は不明)が建てられました。

 

他にも当時はこうした西洋館がいくつかあったようですが、当時から現存するものはこれのみとのこと。

 

 

普段は内部には入れませんが、東京文化財ウィークの折りに
10月26日(土)から11月 4日(月・振休)まで 内部公開されています。

 

到着した時には軽く列ができていました。

スリッパの数分しか人を入れないのためです。

 

写真撮影はOKですが、ネット上での公開は不可なので、以下口頭説明のみにて:

 

内部は明るく家具類も実に軽快でした。

暖炉がいくつもあり、煤がついていたのでお飾りでなく実際に使用されていたのでしょう。

 

特に感嘆したのは数寄板張りの床模様。

実に多種多様な組み合わせ模様になっていました。

 

先日大倉集古館や金沢のしいのき迎賓館で見たヘリングボーン式の組み合わせもあれば、

縦横斜め、自由自在に・奔放に木の板が並べられていて素敵なアクセントになっています。

 

階段の側面、裏にも彫り模様があり、普段目立たない部分であるはずの場所までにも注意を引きつけます。

 

 

 

 

 

それからもうひとつ、このキャンパス内で特筆すべきなのが礼拝堂でしょう。

 

設計者は、アメリカ人建築家・ウィリアム・メレル・ヴォーリズ。

氏はまたキリスト教の伝道師であったこともあり、日本各地の教会を数々手掛けたことで有名です。

 

一般によく知られるのは、教会よりも学校の方でしょうか。

関西に多く彼の建造物を見ることができ、たとえば、神戸女子学院、同志社大学、関西学院大学などなど。

 

 

 

聞くところによると、ヴォーリズはこのチャペルで結婚式を挙げた由。

となれば思い入れも強かったことでしょう。

 

設計年は1916年(大正5年)。

建築様式はイギリス・ゴシック。

こちらも今回公開でした。普段は要申請と書かれています。

 

 

 

教会の周りを一周したところでこんな横顔のメダルを見つけました。

 

冒頭で述べた本学の創設者ヘボン博士です。キャンパス内にはヘボン博士の銅像も別途ありました。

慶応大には福沢諭吉、早大キャンパスには大隈重信像があるのと同じように。

 

 

 

ステンドグラスはシンプルですが、十字架の形です。

大きなガラスですが、色合いなど柔らかいなと感じます。

 

 

 

そして木造り天井の妙にもご注目。

斜めに渡された木材の奥にパイプオルガンが鎮座します。

 

 

 

パイプオルガン演奏会・午前の部には間に合いませんでしたが、ラッキーなことに午後の演奏会用なのか練習されている方がいて、音色を聞くことができました。

 

音色は昔の製作法に基づき再現。

バロック時代の製造にならって20世紀以降に作られたパイプオルガンとしては、

日本初のものだそう。

世界でも4台目だったようです。

 

 

 

細部の彫刻・透かし彫りが見事です。

 

 

 

演奏者の全体像はパイプの奥に隠れて見えませんが、時折ちらりと腕が空を切るのが見えました。

 

 

 

 

 

 

先に触れた学習院大学も建築的に見所が多いのですが、

明学は可愛らしい建物が多く、ぬくもりを感じます。