以前、角館に行って解体新書の挿絵を手掛けた小田野直武のお墓と実家巡りをした話を書きました。
すると、その後、思いがけないところで解体新書関係の事物にぶちあたることになり、ちょっとびっくり。
普段気に留めなかったものが、急に意識することで見えてきて、すくい上げることができるようになるのでしょうか。
不思議な現象です。
磁力を得たかのよう。
●解体新書関連その1(東京都中央区・聖路加病院前)
別のものを追いかけてここ(聖路加病院前)まで来たら、すぐ横にこれがありました。
いわゆる、セレンディピティ?
解体新書の挿絵の一部です。
なぜこんなところに?
という疑問は直ちに氷解。
聖路加病院のあたりにかつて、福沢諭吉が開いた蘭学塾があったそう。
そこで福沢諭吉の碑が建てられ(右)、後年になってからその脇に
蘭学にちなみ解体新書の石碑ができた、というわけです。
わたしがここに来たのは福沢諭吉の碑を見るためでした。
作者が、建築家の谷口吉生なのです。
建築家が碑の制作とは意外。
塾生の谷口氏だからこそ、慶應義塾創設者福沢の碑を手掛けたのかな、と思いましたが、よく調べてみると、谷口氏は、国内有数の碑を数多く作っていらっしゃるんです。
側面にはこの地ゆかりの説明。
最初の写真にあった解体新書の碑はこちら。
日差しが強くてうまく撮れませんでしたが。
そしてこの碑の男性像をよく見ると、ちゃんと解体新書のあるページを模していることがわかります。
右の画像、どこで出会ったかというと、これまた都内の某所です。それはーーー
●解体新書関連その2(東京・駒込)
六義園そばにある東洋文庫ミュージアムです。
常設展示室の一角で、解体新書のミニ解説上映がありました。
前野良沢や杉田玄白が苦労してターヘル・アナトミアを訳し、解体新書として出版。
挿絵を手掛けたのが秋田蘭画の小田野直武でした。
こちらのビデオにも、画 小田野直武とわざわざ挿入されていました。
これまで解体新書など縁がなかったのに、小田野のお墓詣りをした途端、
次々芋づる式に目の前に登場します。
のみならず、ダメ押しにもうひとつ発見がありました。
●解体新書関連その3(角館)
それがこれ、角館にある新潮社記念文学館でのこと。
お墓詣りの後、こちらに寄ってみたのは、新潮社ゆかりの文献をちらりと見てみたかったから。
でもまさかここで解体新書に出会うとは。
まずこちらが新潮社記念文学館。
新潮社文庫の碑があります。
モデルは雪国。
これが石に彫られています。
碑の左側。
と、そこに、何の脈絡か不明ながら、いきなり解体新書の碑が。
どうやら挿絵を描いた小田野の出身地ということで建てられたようです。
その場所に新潮社記念文学館の前が選ばれた理由は不明のまま。
解体新書が新潮社から出たはずはありませんが、本つながりでここが選ばれたのかな、と思いました。
去年、聖路加病院で人間ドックを受けたのに、最初の写真にあった碑には気づくことなく通り過ぎました。
ゆったりと余裕を持たないと、なかなかこういうものは見つけにくいものです。