北陸旅行の続きです。

富山から高岡経由氷見線で観光をして、高岡に戻り一帯を見物した後、国宝の瑞龍寺を見て北陸新幹線で金沢に移動しました。

 

金沢2泊の最中、ちょっと郊外へも足を延ばすことに。

行き先は、宇野気という小さな町。

あれこれと金沢で観光したため出発が遅くなり、到着したころ(18時前後)には夕闇が迫っていました。

 

でもおかげで、燃えるような夕日をバックにした安藤忠雄氏の美しい建物を目の当たりにすることができました。

 

それがこちら、宇野気駅から1.5kmほど先にある安藤忠雄設計・石川県西田幾多郎記念哲学館です。


 

写真は着色やカラーコントロールなど一切なし。

撮ったままの色合いです。

 

 

 

17:30から無人駅になる宇野気の小さな駅舎を背にして先へ進みますが、人気なし、街灯は間隔も大きくてほの暗く、心細さ満点です。

 

静まり返った見知らぬ街を暗がりの中進みながら、「すごいところに来ちゃったな」という思いと、「こういう一種のデペイズマン的感覚は想定内だな」という気持ちが混ざり合います。

 

とにかく、華やかで見どころ満載の金沢から一転、うら寂しい思いをしてまでここに来る人も珍しかろうと我ながら思います。

 

 

展示室はすでに閉まっている時間ですが、21時まで企画展示室以外であれば中に入ることもでき、ライトアップもあるのを知っていたので、とにかくひと目見ようと足を運びました。

 

金沢あたりの建築物は谷口父子の独壇場。

村野藤吾、黒川紀章建築など、見るには見ましたが圧倒的に少ないです。

そんななか、安藤さんもこの金沢からほど近い場所で街おこしに参画しているのを知り、とにかく見たくなりました。

 

到着したときは、こんな感じでうっすら赤かった西の空ですが、徐々にその色を増していきます。

 

 

 

 

いくらライトアップしているとはいえ、こんな時間にこんなところを訪れる物好きはいないと見え、館内、周囲、われわれのみ(除く館の関係者)。

 

 

 

 

展示室は閉室でも、西田幾太郎さんの書斎の再現や、説明書きなどを見ることができました。

 

これは3Fの窓から。

 

 

 

ところが、19時半頃、もうひとり来訪者がありました。

館内のカフェで21時まで軽食を出しているため、それを食べに近所の方がふらりとひとりでやってきたんです。

常連さんみたいでした。

その話は別途書きたいと思います。

 

 

 

このコンクリートの打ちっぱなしが、国立新美術館をほうふつとさせます。

あちらは黒川紀章さん設計ですが。

 

 


哲学者の記念館にしては斬新。

 

 

 

 

これが宇野気という観光地でもない町にポツンとあるんです。

 

 

 

 

いいものを見させていただきました。

燃えるような夕日。

 

人がいなくても21時までライトアップをして、企画展示室以外は館内立ち入りOKにして、監視員の方も配置して、これは大赤字ではないかと思うのですが、西田幾太郎氏の事を少しでも知って、なじんでくれればいい、そんな鷹揚さを感じます。

 

金沢を故郷に持つ谷口吉生さんでなく、安藤忠雄さんに建築を頼んだという点も、なにか気概のようなものが感じられます。

 

 

この刷毛ではいたような真紅の夕暮れの風景は、来場者数・儲け度外視でいいものを作ろう、といった館の熱意とともに、この旅で一番心に残りました。