フランスの造形作家・クリスチャン・ボルタンスキーの展覧会が再び東京にやってきましたね。

 

 

2016年に東京都庭園美術館で開催された「クリスチャン・ボルタンスキー  アニミタス-さざめく亡霊たち」で作品を初めて目の当たりにしましたが、大ぶりのインスタレーションは騒々しさとは無縁。

現実の光景と見えない世界が交錯するが幻想的な内容でした。

 

会場となった旧朝香宮邸という同美術館の特性を生かし、この館に住んでいた人たちが住んでいた場所と、その場所にいない彼らたちの存在を意識させ、彼の通底したテーマ「Absence不在」と「Presence存在」が盛り込まれていました。

 

 

現在は新国立美術館(2019年6月12日(水)~9月2日(月))で特別展が開催されていますが、それに寄り添うようなかたちで、エスパス ルイ・ヴィトン東京にて、アニミタスシリーズの2種類のインスタレーションを見ることができます。

 

庭園美術館のあの館とボルタンスキーの相性がよかったので、美術館という箱のなかで見るべき大義名分があまりなくて、新美の展示のほうはそそられないのですが、先日ヴィトンの方は見に行ってきました。(6月13日~11月17日)。

 

こちらは例によって無料。万が一がっかりしても悔いなし、そんな気持ちで足を運んだのですが、

思いのほか、ボルタンスキーテーストがうまく演出されていました。

 

あのスペース(ヴィトンのショップの上)に草と土撒く、という演出方法。

画面の森林と地面が一続きになり、林の中に身を置く雰囲気をかもしていました。

 

 

 

 

 

こちら、日本の風景だそうですよ。

「アニミタス、ささやきの森」(日本)という作品です。

静止画ではなく、ビデオ作品になっています。

 

風鈴がそよ風に揺れて鳴り響く光景が延々続き、なんと全12時間・・。

といっても、ずっと同じような光景が続くので、見たいときに見ればいいのです。

 

風鈴が取り付けられた棒が か弱く細くしなり、死者の弔いの音が木々の間にこだまします。

 

 

 

 

下は、「アニミタス 死せる母たち」(死海 イスラエル)

フランス語の原題はMeres mortes、文字通り死せる母たち=Dead mothersでした。

ここでは文字通り「死」の言葉が直接的に使われ、イスラエルの地で果てた人たちへの静かな鎮魂歌といった様相です。

 

 

 

 

ボルタンスキーのバックグラウンド

 

このボルタンスキーですが、芸術家の登竜門ボザールを出たわけでなし、正式な美術教育は受けていないと聞きます。

ただ、医者である父が、かのダダイズムを率いたアンドレ・ブルトンを息子に引き合わせたとのこと。

そのときのブルトンのボルタンスキーへのアドバイスの言葉が忘れられません。

 

正確な言葉ではありませんが、ざっくりした訳はこんな感じです:

「君は根が優しそうだ。アーティストにはなるな。アーティストなんてみんな底意地が悪い。汚い世界なんだよ」

 

 

 

◆フォンダシオン ルイ・ヴィトン(パリ)

 

本展示入口にはパリの新名所として威容を誇るフォンダシオン ルイ・ヴィトンの写真がありました。

まだ行ったことはありません。

大行列のウワサを聞きましたが、今はどうでしょう。

 

 

斬新なこの建築を作ったのはフランス人ではなくアメリカ人のフランク・ゲーリーです。

ゲーリーといえば、これまた斬新なビルバオ・グッゲンハイム美術館が日本では有名でしょうかね。

 

日本には彼の作品はないと思っていたのですが、いまWIKIを見たら、神戸にある「フィッシュ・ダンス」が彼の作とのことでした。

(追記: 建造物というよりオブジェかな?)

 

 


 

 

・エスパス・ヴィトン「ボルタンスキー アニミタス」展

http://www.espacelouisvuittontokyo.com/ja/

 

・国立新美術館「クリスチャン・ボルタンスキー – Lifetime」

http://www.nact.jp/exhibition_special/2019/boltanski2019/

(庭に展示されている吉岡徳仁 ガラスの茶室 光庵もお忘れなく。)