先日の続きです。


前回は、ホキ美術館の外観を中心に書きましたので、

今回は内部に関するお話を。

 

 

なおホキ美術館では内部の写真撮影は一切禁止ですが、

今回は、美術館主催のツアーに参加し、撮影が許可されました。

 

 

 

まず前回のおさらい。

本美術館では、ホギメディカルのオーナー、保木将夫氏が集めた

現代写実絵画のコレクションを見ることができます。

 

 

外観は斬新で、2階部分は30mほど空中に突き出ています。

 

なぜこうした支えのない構造が可能かというと、

たとえでいうと段ボール構造に近い仕組みだそう。

 

つまり、普通の紙を水平に持ち上げることはできませんが、

紙と紙の間に段ボールのようなくねくねを入れ込むことにより

水平に保つことができると聞きました。

 

 

 

 

 

さて今回は内部の様子です。

 

真っ先に指摘したい点は、こちらの階段の曲線。

なだらかなうねりがありますが、これは、保木氏が初めて購入した

森本草介画伯の絵画「横になるポーズ」に描かれた女性の体のラインを模しているのです。

 

 

 

 

 

「横になるポーズ」はこちらに画像があります:

https://www.hoki-museum.jp/collection/morimoto.html

 

女性の背中から腰にかけて引かれたなだらかな線を階段に落とし込んでいる、

なんて洒落た演出なのでしょう。

 

 

さらに天井にも仕掛けがあります。

 

 

 

 

天井にある丸い穴は、天野川の模様のようですが、

実は実用性を兼ねています。

 

ライティング、空気孔、スピーカーなどそれぞれに役割があるんです。

 

でも、露骨に機能を見せないよう、模様のように隠してあります。

 

 

 

 

そして最初の部屋は壁に使われた鉄という部材の特性を生かし、

絵画や解説の設置にワイヤーは使用せず、マグネット留め。

ちょっとびっくり。

 

 

 

 

地下2階の部屋は、選ばれし14名の現代画家さんに付与された区画に

代表作が掲げられています。

 

作品への思いをスピーカーを通して聞くことができるのですが、

それぞれの音が混じらぬよう、音が直線的にしか放出されないよう

コントロールされています。

つまり、スピーカーの延長線上に立たないと聞こえにくい、という仕組み。

 

灯りはほの暗く、ムード満点で、それぞれの作家さんたちの思いに浸ることができます。

 

 

 

 

こちらは空を仰ぐことができる場所。

夕暮れの空が隙間から見えます。

 

 

 

 

どこへ行っても美しい曲線使いが印象的。

 

 

 

 

さて、例の30mの空中に浮かぶ先端はこんな感じです。

外光が入ってきます。

 

実は開館当初はブラインドを下げず、太陽光を入れていたのですが、

作品に触る人がいたため絵にアクリル板を入れざるを得ず、

そうすると光を反射してしまうため、苦渋の選択で自然光を遮断したそうです。

 

触る人がいなくなればまた、アクリル板を取り、外光を取り入れることができるでしょう。

 

 

 

 

上の部分を外から見るとここの突端部分に当たります。

 

 

 

 

突端部分を歩いていても、宙に浮いている感じはなく、

振動防止措置はばっちりです。

 

 

ホキ美術館のコレクションは写実のみ、と方針が決まっているため、

大型のインスタレーションを入れるための可動性を考慮する必要はなかったようです。

 

髪の毛一本一本までももが繊細に描かれた写実作品を最大限美しく

見せることに専念したホキ美術館。

 

なにからなにまで異色の美術館なのでした。