先日三菱一号館美術館で開催されているルドン展で、

嬉しい再会がありました。

 

写真右の《青い花瓶の花》の絵です。

 

*以下写真撮影はブロガー内覧会の折りに許可を得ています。

 

 

なぜか学生時代から我が家にずっとこの絵の絵葉書があり、

結婚する際、なんとなく家から他の美術書とともにこの絵葉書を持ってきたのです。

 

ひろしま美術館所蔵とあるので、たぶん父が展覧会を見た折りに買ってきたものが

家にあり、私が気に入って机の引き出しにしまった、そんな感じだと思います。

 

 

つまり私は実物を見たことがなく、「再会」といっても

実物は初見なので、ああ、これか、意外に大きいんだ、なんて感激していました。

 

実物を見た後、久々にデスクから取り出しましたが、

もうすっかり黄ばんでいます(笑)。

 

 

 

 

これと似たようなルドンの花束の絵はこれまでに海外も含め何度か見ており、

私の中ではもう長い間オディロン・ルドンは花の絵の画家、という位置づけだったのですが、

三菱一号館美術館で以前ルドンが描いたボードレールの「惡の華」の挿絵などを見て

静物画家ではないのだ、と初めて気づきました。

 

 

つかみどころのないややおどろおどろしい版画作品などは、

抽象画とか象徴派寄りで、写実画家とは対極にあるような存在です。

 

印象派とか後期印象派が画壇を席巻した時代に、

よくあれだけ個性的な立場を貫くことができたものだ、

と驚きます。

 

貴族のご婦人主催のサロンなどに出入りした人ではなく、

当時のトップランナーたちに感化されることなく

自我を貫いた人なのでしょうかね。

 

 

花々の絵に通じる人物像もありますが、幻想的です。

 

 

 

 

 

上の絵などはまだ馴染みやすい方ですが、

どこか生命を意識させるようなでもとらえがたい絵も多く並びます。

 

 

 

 

 

 

今回のルドン展では個人的に円のかたちが心に残りました。

 

おたまじゃくしの卵みたいに、感じられるせいで、生命を意識させるのでしょう。

 

夢とか植物の種子などに魅せられた様子がうかがわれ、

それは時代のコンテクストの中でとらえるべきもののように思えます。

 

 

 

 

 

 

植物学者・植物学への関心があったと聞きますし、

当時フランスでは夢への興味が高かったようです。

プルーストの小説にもそれは色濃く表れています。

 

(ただし、フランスでフロイトの夢判断が流行したのはもう少し先のことと聞きますので、

夢を追求したのはフロイトだけではなかったのですね。)

 

 

科学と非科学的なものがまだごっちゃになって、科学的アプローチで

すべてを見ようとした時代だったのでしょうか。

 

だからルドンの絵にも、合理的なものと非合理的なものがまじりあい

それが現代のわれわれの目には、不思議に映るのでは、なんて思ったり。

 

 

さてそうした個人的な雑感で本展を片付けてはいけませんね。

 

 

フランスのドムシー男爵の館の食堂にあったルドン装飾画が15点来日し、

三菱一号館美術館所蔵の《グランブーケ》と邂逅を果たしている、

それがなにより見どころの一つ。

 

こちらがドムシー男爵の館の食堂の再現です。

 

《グランブーケ》はいつもの定位置に置かれ、ほかの装飾画と肩を並べているわけでは

ないのですが、代わりに写真が置かれています。

 

《グランブーケ》は移動するとパステル画ハラハラはがれおちるリスクがある

と聞いたことがあるので、絵のためにはこの措置がベストだったのでしょう。

 

食堂の内部がどんな風だったのかはわかりませんが、

装飾画は、全体的に沈んだ日向色でした。

 

 

 

 

ルドンは椅子の装飾も行っていたようで、

下絵とその下絵に基づいて作られた肘掛け椅子のコラボといった目新しい展示も

ありました。

 

椅子の方は、下絵にきわめて忠実に製作されていました。

 

 

 

 

今回はブロガー内覧会でお邪魔したのですが、

安井裕雄学芸員とTakさんのお話では、絵の中の「赤」に注目してみて、とのことでした。

 

 

さらに館長の高橋明也さんは、《グランブーケ》との衝撃的な出会いについて

熱く語られておりました。

 

 

 

 

 

ちなみに冒頭で触れた「実家から運び出した親の所蔵品の美術書」の中には

高橋館長の執筆(翻訳)が掲載された本もありました。

西洋美術館ご勤務時代のものですね。

以前のエントリーで入れた本棚写真のうち、

全集の隣にある「西洋の美術 その空間表現の流れ」という一冊がそれです。

 

父の蔵書だったのですが、かなりしっかりした読み物で、

まだ読めていません。

気合いを入れないと読みこなせない気がして(笑)

 

 

関連:

年間パスがお得になりました 三菱一号館美術館

 

 

http://mimt.jp/redon/

展覧会名 ルドン ー 秘密の花園

場所    三菱一号館美術館 

会期    2018年2月8日(木)~5月20日(日)
開館時間    10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は21:00まで) ※入館は閉館の30分前まで
休館日    月曜日(但し、祝日の場合、5/14とトークフリーデーの2/26、3/26は開館)